夢
「花火、綺麗だったねー」
花火大会が終わり、人混みの中、美琴と新太は手を繋いで歩く。
「うん」
隣を歩く美琴は本当に幸せそうで、新太も幸せな気持ちで満たされる。
『気分転換になれば良いよな』
新太は、ふと、律季が言った言葉を思い出した。
「ねぇ…美琴は将来の夢とか…あるの?」
悩んでいることがあるなら話して欲しい。
新太は、そう思って尋ねた。
「夢?―――うーん、まぁ…。通訳とかかな…」
少し言いにくそうに、美琴が答える。
「通訳?モデルじゃなくて?」
美琴が通訳になりたいと思っていたとは知らず、
新太は少しショックを受けたが、美琴には気付かれないように無表情で尋ねる。
「モデルは…まぁ誘われて、やったら楽しかったから続けてたけど。それに、ママのこともあったし…。」
美琴は少し言いづらそうに笑う。
「でも、もうやめようかと思ってるよ?」
「どうして?」
「私…何も努力してないのに楽しいからって理由で雑誌とか載って…。だけど、モデルの子達はもっと色々努力してるから、なんか“違う”なって。」
美琴は…ーーきっとモデル仲間の中でも、上手くやれていないんじゃないかと新太は察した。
「中途半端にしてる自分が…嫌なんだよね…」
美琴の魅力は天性のモノだ。
努力で勝ち取ったものでもないし、元々モデルが夢だったわけでもない。
それを妬まれてしまったんだと、新太は察した。
「そっか…」
美琴の隠す本音を、新太は察して優しく頷く。
そんな優しい新太の表情に、美琴は静かに微笑み返す。
「新太の夢は何?」
美琴は、同じ質問を新太に返す。
「俺?…ーーー」
突然振られた話題に、新太は黙り込んだ。
(―――何だろう…)




