伝えたい言葉
律季に言われて目が覚めたように、
新太の心の中の“迷い”、“悩み”、“弱気”が消えた。
――――美琴が好きなんだ。
美琴が自分をどう思っていても、
美琴が律季をまだ好きだとしても、
律季や、友也の存在に、嫉妬してるのは、
―――――ただ、美琴が好きだからだ。
もし、美琴に避けられるようになったら…。
“男”として見れないと言われたら…。
――――それは、言われてから考えればいい。
美琴が好きだと、伝えなければ、
何も変わらないんだ。
「美琴!」
新太が大きな声で、美琴の名前を呼びながら海の中に入ってくる。
海の中で泳いでいた美琴と斗亜は、近づいてくる新太に驚きながら、見ていた。
「あ…っ」
急いで海の中を走り、深い所で新太は足を滑らせた。
「新太っ!?」
美琴が驚いて、泳いで新太のもとに向かう。
美琴が新太の腕を支えるように掴む。
「あ、ごめん…ちょっと体勢崩した…」
苦笑いで新太が言う。
「バカ、おどかさないでよ」
ホッとしたように、美琴が怒る。
「俺、美琴が好き」
美琴と目が合うと、新太がまっすぐに見つめて言う。
「…………」
美琴はきょとんとしたまま、動かない。
「美琴?」
新太が美琴の鼻をつまむ。
「え?―――ちょっと…急に何?」
美琴は我に返ったように、動揺する。
「ずっと前から好きだった。」
新太が、もう一度、美琴を見つめながら告白する。
「新太、やめて…」
美琴が赤面しながらうつ向く。
「嬉しくて死にそう…」
新太の心臓が激しく飛び上がる。
(え…ーーーーー?)
そして、美琴は、新太にとびきりの笑顔を向けた。
「私も、新太が好き」
「え…」
(好き?美琴が…俺を?)
「大好き」
ジャバッと水しぶきをあげて、美琴が、放心状態の新太に抱き付いた。
「…―――つか、お前ら突然なに告りあってんの?」
斗亜の言葉に、二人はハッとする。
呆れたように、斗亜がすぐ目の前に立っていた。
「おめでとう、やっと付き合うわけか…」
斗亜は、二人を見て、嬉しそうに笑った。




