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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第四章】
214/250

波しぶき

「やば、気持ちいいっ!」

バシャバシャと海に入っていく美琴と斗亜を、

律季と新太が砂浜に座って見ていた。



「あれだと、斗亜が彼氏みたいだよな…」


律季が笑いながら言う。


「そうだね」


新太は、元気なく頷く。


そんな新太を、律季が横目でチラッと見る。



「こないださー、」

律季が、美琴を見つめながら声をあげて話し出した。


「雫ちゃんに会ったんだよね、偶然。」


「へぇ…」

新太はテキトーに相槌をうつ。


「雫ちゃんが見たらしいんだけど、美琴と知らない男が近所で抱き合ってたとか」


「え…」


(“美琴と知らない男”が“抱き合ってた”?)


新太は一瞬、ショックで目の前が真っ暗になった。



「新太は、知ってる?」

律季が新太の顔を見る。

律季と目が合うと、少しだけ冷静になれた。


すぐに浮かんだのは、最近美琴に会いに来ていた、“友也”の存在。


「…―――多分。」

新太が、視線をはずして答える。


「へぇ。知ってて邪魔しなかったんだ?」

新太の表情を窺いながら、律季が意地悪な質問をする。



「あのさ…」

前を向いたまま、新太が言う。


「律季は、本当に美琴諦められるの?」


「は?」

突然の話に、律季は目が点になる。



「親が決めた将来とか、結婚相手とか…そんなんで平気なの?」


新太が、納得いかないというように尋ねる。


「―――平気だよ…そうやって育てられたんだし」

少しだけ間があって、律季が笑って答えた。


「もしまだ迷ってるんなら…」


そんな律季に、新太が真剣な顔で言葉をかけようとすると、


「あはは…っ」

突然律季が声をあげて笑い出した。





「何?もしかして俺と美琴がまた付き合えばいいのにとか思ってる?」


笑ったあと、律季が新太に責めるように問い掛ける。



「…――もし、律季がまだ美琴を好きなら。」

新太は真剣な顔で、律季を見返していた。



「お前さ…美琴のことちゃんと見えてる?」

律季があきれたように言う。


「え?」

新太が意味がわからず戸惑っていると、律季が話し出した。



「俺が好きでも、美琴が好きじゃなかったら意味無いだろ?」



律季は怒っているようにも見えた。


「つかさ、新太は美琴が好きなんだよな?」


でも、それは新太の気持ちに対して、ではないようだった。



「だから、俺から奪ったんだろ?」


新太が美琴を好きでも、そこに怒りはないようだった。


「だったら、中途半端なことしてんじゃねーよ!!ちゃんと責任とれよ!!」


(律季…ーーー)




「俺、間違ってた…ーー」


新太は呟くと、すぐに立ち上がり、海辺へと走り出した。

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