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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第四章】
211/250

海へと向かう道のり

『約束したよね!?海行くって』


夏休みに入る、前の日。


――――美琴がそう言ったのを思い出していた。






新太が朝起きると、美琴はすでに朝ごはんを食べていた。


「おはよ」

新太はドキドキしながら、挨拶する。


「―――早くしないと、置いてくからね!!」

美琴はチラッと新太を見ると、すぐに視線を朝食へと戻す。



新太はそんな美琴の態度に、ホッとしたように笑う。







「海、誘ってもらえて良かったね」


家を出て、隣を歩きながら新太が言う。


「うん」


美琴が嬉しそうに頷く。


「楽しみだね」


「うん」


二人で待ち合わせ場所へと向かう。



「美琴…」


先ほどとは違う、緊張しているような声色で新太が美琴の名前を呼ぶ。


「なに?」


「手、繋ぎたい」


新太は、美琴の顔を見つめていた。


「へ?なんで…」


驚いて、美琴も新太の顔を見上げる。


「昔は繋いでたじゃん。」


そう言いながら、美琴の手を握ると新太は前を向いて歩き出した。



(え、何これ……。どういうこと?)

美琴は混乱しながら早くなった新太の歩く速度に合わせようと足を早める。


心なしか、新太の耳が赤くなっているように見えた。



(新太の気持ちが分かんない…どうして手なんて繋ぐの?)


同時に美琴の脳裏をよぎったのは、数日前、

クラスの深雪早子と歩いていた時の新太だった。


新太が早子の髪に触れた手で、手を繋がれている自分。


新太の手は大きくて、優しく包み込む。


それなのに、こんなに切ない。


(どういうつもり…?)



新太が好きだから、あの子と同じ手で触れて欲しくない。


なのに、


新太が好きだから、振りほどけない手を、美琴はずっと切ない表情(かお)で見つめていた。





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