まさかの再会
「新太ーっ」
一人先に校門を出た新太を、美琴が走って追いかけて来た。
「ちょっと黙って先に帰らないでよー、どうしたの?」
怒ったように、美琴が新太の顔を覗き込む。
「いや、別に」
新太は顔を背けて答える。
(言えるわけない、“律季と二人きりで話してるを見ていられなかった”…なんて)
「そういえば夏期講習とか行くんだって?」
新太が不機嫌そうで、美琴は話題を変える。
「あ、うん。俺の今の成績じゃ美琴と同じ大学は行けそうにないから…」
「ふーん…」
(そっか、頑張って…!)
美琴は心の中で、新太が同じ大学に行こうとしてくれていることを喜ぶ。
「まぁ、分からないところは教えてあげても良いよ?」
からかうように、美琴は新太に言う。
「ありがとう…」
そう言う新太は、どこか辛そうだった。
「明日から夏休みなのに、新太なんか元気ないね」
「受験生に夏休みは無いだろ」
「えー?約束したよね!?海行くって」
行く気満々だった美琴は、新太に迫る。
「いや、でも…」
言いかけた新太の腕に、美琴がしがみつく。
「行こうよぉ!あと花火大会も!息抜きもしなきゃ!」
美琴の必死さが可愛くて、新太は顔を赤らめる。
「仕方ない…な」「美琴!」
照れながら新太が言うのと、後ろから美琴を呼ぶ声はほぼ同時だった。
「友也!」
振り返った美琴が、“友也”のもとへすぐに駆けて行く。
(誰だ…?)
新太は、直りかけた機嫌がまた悪くなっていた。
「うちの学校、昨日から夏休みやってん。」
人懐こい笑顔で、友也は美琴に話し掛ける。
「そうなんだー、なんか変な感じするー!日本で会うと。」
心底嬉しそうに、美琴は友也と話し出す。
「あ、新太!―――友也、留学先でクラスが一緒だったの」
美琴は新太の方を向くと、友也を紹介する。
「友也、新太だよ。」
そしてすぐ、友也に新太を紹介した。
「新太くん、どうも!」
友也が歩み寄りながら言う。
友也は私服姿で、どこか大人びて見えた。
「美琴から聞いてんよー。仲良しな弟がいるって」
「ちょっとやめてよ!」
友也の言い方に、照れたように美琴が嫌がる。
(“仲良しな弟”…―――――!)
二人が楽しそうにやり取りしてる間、新太は一人ショックでフリーズしていた。
(やっぱ俺は…ーーー“弟”―――…?)
深い深い沼に、足が嵌まってしまったような、もがいても抜け出せない感覚が新太を襲う。
そんな新太に気付いていないのか、友也がとんでもないことを言い出した。
「つか、今日泊めてや、美琴ん家。」




