海
「お待たせっ!じゃあ、行こっか?」
美琴が走って待ち合わせの駅につくと、すでに律季が待っていた。
二人は並んで歩き出す。
「そういえば、美琴さぁ、中間試験おめでとう」
「え、何がめでたいの?」
律季が笑顔で言うと、美琴が首をかしげる。
「……一位とったの、嬉しくないの?」
素直にありがとうと言うと思っていた律季は、
驚いて美琴を見つめる。
「別にさ、それって意味なくない?」
美琴があっけらかんとして答える。
「学校で一位をとるのが私の目的じゃないから。」
美琴のこの答えが…律季の心の中にストンと落ちた。
「ははっ、美琴…!おもしれーな!」
自分のこれまでのこだわりは、驚くほどちっぽけだったことに、美琴のお陰で気付くことが出来た。
「え、私面白い?」
つられて笑いながら、美琴が律季を見つめる。
「うん、好き」
律季が無邪気な笑顔で言うと、美琴も笑顔になる。
「ありがと、私も律季好きだわ」
律季は、そんな美琴の言動にますます惹かれていた。
(俺の“好き”を流す女、初めてだわ…)
「ーーーんで?海まで来といて、水着じゃねーの?」
海に着いて波打ち際の砂浜を歩きながら、律季が不満気に言う。
「夏休みといったら海!でも着替えるのめんどくさいでしょ?」
既に足首まで海に濡らしながら、美琴が楽しそうに笑う。
ショートパンツからすらりと伸びた美脚を上げて、パシャッと水音を立てる姿を、律季は目を細めて見つめる。
「律季も、入りなよー!足だけでも涼しいよ!」
かつてない気持ちに…動揺しつつも律季は楽しんでいた。
「本当だ…っ」
(相馬美琴、か…。マジでやべぇな…)
二人は小学生のように、心からはしゃいで楽しんだ。
日が落ちるまで…。




