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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
2/250

二人の関係

「――――んで?なんで俺の部屋に来てるのかな?」

瀬戸(せと) 新太(あらた)がため息をつく。


「何でって、なんで?」

美琴が首をかしげて聞き返す。


その仕草がまた男を誘っているようにしか見えないのを、

美琴は分かっていないからタチが悪い。



「新太は私の弟でしょ?」

美琴が新太(あらた)のベッドに寝そべって言う。

完全に、男として“意識”されていない。


そんないつもながら無神経な態度の美琴に、

新太は苛立ちながらも気付かれないように自分を抑え、

心の中で呟く。


(戸籍上の話でしょ…―――)


「ん?」

無防備に微笑む美琴を、新太がきつい眼差しで見つめる。

睨まれる理由が分からず、美琴はまたキョトンとする。



「それで?」

埒が明かないので、

新太がため息混じりに、美琴の話を整理する。


「斗亜に告られて、逃げ帰ってきて…明日からどうするの?」



「そうなの、どうしよう…また“友達”居なくなっちゃったんだ…」

思い出したように、美琴がベッドに顔を(うず)める。


「美琴さ…女友達作れば…?」

新太があきれた顔で、そんな美琴を見つめて言う。



「だって…女友達ってめんどくさいんだもん」

美琴がベッドに顔を埋めたまま文句を言う。

「気に入らないとかちょっとしたことで揚げ足取ったり、ハブったりするじゃん?」


「それは理解できないな…」

新太が同調すると、美琴がガバッと顔を上げる。



「でしょ?なんで私…男じゃなかったのかなー」

不満そうに言いながら、美琴はベッドの上で軽く跳ね、あぐらをかく。



「新太の彼女…名前…ホタルだったっけ?」

付き合って三ヶ月になろうとしているのに、

美琴はいまだに新太の彼女の名前をうろ覚えだった。


―――興味がないことは、全く頭に入ってこない。


美琴の脳内は、いつもそうだ。

しかし、新太は美琴の頭の良さを知っているから、なにも言えない。


「そうだけど?」

新太が頷くと、

「ホタルちゃんみたいな女の子とは、絶対仲良くなれないわ…」

美琴がかぶり気味に言う。


「お前、それ…俺の彼女批判?」

新太がムッとして美琴を見返す。


「いや、そういうんじゃないけどさ…。私は苦手だなーと思って」


「今までそんな事思ってたの?」


「ごめんごめん…でも私がどう思ってようと、新太は関係ないでしょ?」

苦笑いで美琴が言うと、ベッドから降りる。


「あ、そうだ!夕御飯、呼びに来たんだった!―――新太、食べよ?」

思い出したように、言うと美琴はすぐに部屋を出ていく。



美琴の父親と、新太の母親は、二人が三歳の頃に再婚した。


勿論そんなことは覚えていなかったし、

どこにでもいる、“普通”の家族だと思っていた。


―――美琴と新太が血の繋がっていない姉弟(きょうだい)だと知ったのは、今年、中学を卒業した時だった。


父親が、改まった口調で二人に告げた。



『俺達は再婚同士で…お前たちは本当の姉弟ではない』と。



だからといって、美琴は何も動揺しなかったし、

『そんなことはどうでも良い』と笑ってさえいた。


新太は、薄々気付いていた“姉と(じぶん)”が似ていない理由を聞いて、納得した。

納得したが…その事実を受け止められずにいた。


しかし、新太は元々感情を表に出さない性格で、

両親も、美琴も全くそんな新太に気が付いていなかった。



そして…受け止められないまま、高校生になった。


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