ぎこちない二人
目の前にいた美琴の表情に、斗亜は困惑していた。
『美琴』
新太の声が聞こえた瞬間の、嬉しそうな顔。
そのあとに見せた、切なく不安そうな顔。
(美琴は、新太のことが…――――?)
でも、目の前で再会を果たした二人はなんだかぎこちない。
お互い想い合っているはずなのに、お互い心を許していないような、どこか不自然な雰囲気。
「美琴は、来年二年生なのか?」
斗亜は、ぎこちない二人を見ていられず、話題をふる。
「ううん、進級試験はパスしたから斗亜と同じ三年になれるよ!」
美琴は、笑顔で斗亜に答える。
「あ、てか斗亜は進級出来るの?」
美琴がからかうように言う。
「出来るわ!この春休みに補習受けるけどな」
斗亜はツッコミながら、美琴に言う。
「え、それすっごい怪しい!変わってないねー、斗亜」
豪快に笑いながら、美琴が言う。
そんな美琴を、新太は愛おしそうに見つめていた。
(美琴だ…。帰ってきたんだ…本当に…――――)
新太は目の前にいる美琴をひたすら見つめていた。
桜の花びらが舞い落ちて、美琴の頭にひらりと乗る。
「おかえり」
新太が、美琴の頭に乗った花びらを取りながら微笑む。
突然頭に手を伸ばされて一瞬ビクッとしながらも、花びらをつまんだ指を見て、美琴は新太に微笑み返す。
「ただいま」




