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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第三章】
193/250

告白する勇気

「付き合ってください…」


「…すみません」

人を傷付けるのは、自分も傷付く。

新太はその事に気が付いた。




「新太、大丈夫か?」

落ち込んだ様子で帰ってきた新太に、斗亜が声をかける。


「大丈夫じゃない…」

斗亜の前に座って、弁当箱を開けながら新太がため息混じりに言う。


「お前ここんとこ、週2ペースで告られてるな」


斗亜は頬杖をつきながら、購買のパンにかぶりつく。


「何でだろう」

新太は、箸を止めて弁当箱を見たまま言う。

「話したこともないのに…ーーー」



外見(みため)じゃね?」

斗亜がサクッと答える。


「それはそれで傷付くんだけど」

新太が口許をひきつらせて笑う。



「でもさ、普通に勇気要るよな…告るって」

急に斗亜が真面目になった。


「?」

そんな斗亜を新太は、意外そうな目で見る。


「特攻隊、みたいな?」


(え、そんなイメージ!?)

斗亜の例えが思ったより恐ろしくて、新太は心の中でギョッとする。



「俺はさ…一度失敗してるから」

珍しく真面目な表情で話す斗亜に、新太が驚く。


「斗亜…」



「それって七星のこと?」

突然現れた律季に、斗亜も新太も驚く。


「え、七星って…?」

新太は訳がわからず二人を交互に見る。

斗亜は、ガタッと無言で席を立つ。





「七星とちゃんと話せばいいのに」

律季は歩いて行ってしまう斗亜の背中に声をかける。



「うるせーな、七星は関係ねーし」

ムキになって言い返すと、斗亜は教室から出ていった。




「いつまでやってんだろうな?あの意地の張り合い…」

斗亜を見ながら呟く律季に、隣のクラスから女子が顔を出す。



「律季くん、ちょっといい?」

どうやら、律季のクラスの女子のようだった。


「あ、俺日直だった!じゃあな」

何しに来たのか、律季は颯爽と自分のクラスに戻っていった。


一人その場に残された新太は、弁当を口に運びながら考える。



斗亜が言った“失敗”、“告白する勇気”。


律季が言った“意地の張り合い”。


恋愛は、勇気がいる。

告白する勇気、傷付く勇気、傷付ける勇気。


告白する勇気を知ったから、今は告白されると胸が痛い。

相手の気持ちに応えられなくて申し訳ない気持ち。

傷付けると分かっていて、それでも言わなくてはならない返事。



そして相手に拒絶される勇気がない自分は…、

いまだに美琴からのメールに返信ができないでいる。


(メールをし始めたら…きっと想いを隠しきれない…)



連絡をとり始めたらきっと、好きな気持ちが止められない。


(“好き”だと気付かれたら今度こそ…美琴は俺を避けるんだ)



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