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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第三章】
187/250

学祭

斗亜は、だんだんイライラしてきていた。


雫のいるB校の学祭へ向かう途中、

何度も『(あしどめ)ナン』を喰らい、ようやくB校の校門をくぐると今度は受付で捕まったのだ。


「南青高校なんですかー、すごぉい!」

「今度改めて遊びません?」

「連絡先とか教えてー?」


(語尾を伸ばす女、マジイラつく。こいつらの声、どっから出てんだよ…)

斗亜は昔からぶりっ子タイプの女が嫌いだ。




「お前らといると、こうなるんだな。今まで美琴がいたから分かんなかったけど」


ため息をつきながら、ようやく受付から解放されて歩き出す。



まず斗亜は右隣を歩く新太を睨む。

「新太、押しに弱すぎ。連絡先とか交換しなくて良いから」


「あぁ、ごめん…」

斗亜の迫力に、新太は謝る。


次に斗亜は左隣を歩く律季を睨む。

「律季は愛想良くしすぎ。いちいち振り撒くんじゃねぇ、その気もないくせに」


「ごめん、癖で…」

律季は苦笑いで斗亜に謝る。



「美琴の存在、でけぇな…」

切実な気持ちで斗亜が呟くと、


「うん」「確かに…」

新太も律季も、それぞれ遠い目をして頷いた。





「新太っ」

視線を目立つほど浴びている三人の噂を聞き付けて、雫は教室からすぐに外へと駆け付けた。


「雫ちゃん、久しぶりだね」

「あ、えっと…菱川くんも来てくれたんだ」

突然、名前で呼ばれて驚きながらも、律季に笑顔で応える。


「誰?」

雫と面識のない斗亜は、こそっと新太に尋ねる。


「あ、美琴の中学の時の友達、木下雫」

新太が二人を紹介する。

「木下、こっちは律季の幼馴染みの瀧川斗亜。美琴ともすごく仲良かったんだ」


「あ、“斗亜”くん!美琴から名前聞いたことあったよ」

雫が斗亜にも笑顔を向ける。


「ども…」

無愛想に斗亜は頭を下げる。




雫は改めて新太に話しかける。

「うちのクラスで今、イベントやるから来てよ」


「え、イベント?」

新太が聞き返す。


「うん、イケメンコンテスト」

雫かニコッと笑顔を向ける。


「いや、俺はそういうのは…ーーー」

新太は、すぐに両手を振って断る。


「俺もパス。二人みてぇなイケメンじゃねぇし」

斗亜も、すぐにそっぽを向いて断った。


「じゃあ俺、出ようかなー」

律季がそんな二人を見て、雫に微笑んで言う。


「え?」「はぁ?」

有り得ない発言に、新太と斗亜が同時に律季を見る。



「俺が出ても良いんだよね?雫ちゃん?」

自信に満ちた表情(かお)で、律季が雫に微笑んだ。

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