学祭
斗亜は、だんだんイライラしてきていた。
雫のいるB校の学祭へ向かう途中、
何度も『逆ナン』を喰らい、ようやくB校の校門をくぐると今度は受付で捕まったのだ。
「南青高校なんですかー、すごぉい!」
「今度改めて遊びません?」
「連絡先とか教えてー?」
(語尾を伸ばす女、マジイラつく。こいつらの声、どっから出てんだよ…)
斗亜は昔からぶりっ子タイプの女が嫌いだ。
「お前らといると、こうなるんだな。今まで美琴がいたから分かんなかったけど」
ため息をつきながら、ようやく受付から解放されて歩き出す。
まず斗亜は右隣を歩く新太を睨む。
「新太、押しに弱すぎ。連絡先とか交換しなくて良いから」
「あぁ、ごめん…」
斗亜の迫力に、新太は謝る。
次に斗亜は左隣を歩く律季を睨む。
「律季は愛想良くしすぎ。いちいち振り撒くんじゃねぇ、その気もないくせに」
「ごめん、癖で…」
律季は苦笑いで斗亜に謝る。
「美琴の存在、でけぇな…」
切実な気持ちで斗亜が呟くと、
「うん」「確かに…」
新太も律季も、それぞれ遠い目をして頷いた。
「新太っ」
視線を目立つほど浴びている三人の噂を聞き付けて、雫は教室からすぐに外へと駆け付けた。
「雫ちゃん、久しぶりだね」
「あ、えっと…菱川くんも来てくれたんだ」
突然、名前で呼ばれて驚きながらも、律季に笑顔で応える。
「誰?」
雫と面識のない斗亜は、こそっと新太に尋ねる。
「あ、美琴の中学の時の友達、木下雫」
新太が二人を紹介する。
「木下、こっちは律季の幼馴染みの瀧川斗亜。美琴ともすごく仲良かったんだ」
「あ、“斗亜”くん!美琴から名前聞いたことあったよ」
雫が斗亜にも笑顔を向ける。
「ども…」
無愛想に斗亜は頭を下げる。
雫は改めて新太に話しかける。
「うちのクラスで今、イベントやるから来てよ」
「え、イベント?」
新太が聞き返す。
「うん、イケメンコンテスト」
雫かニコッと笑顔を向ける。
「いや、俺はそういうのは…ーーー」
新太は、すぐに両手を振って断る。
「俺もパス。二人みてぇなイケメンじゃねぇし」
斗亜も、すぐにそっぽを向いて断った。
「じゃあ俺、出ようかなー」
律季がそんな二人を見て、雫に微笑んで言う。
「え?」「はぁ?」
有り得ない発言に、新太と斗亜が同時に律季を見る。
「俺が出ても良いんだよね?雫ちゃん?」
自信に満ちた表情で、律季が雫に微笑んだ。




