図る気持ち
『美琴、大丈夫…――――』
『もう、怒ってないし。やり直したいとか言わないから』
あの時、そう言ったのは、美琴の気持ちを和らげる為だった。
(美琴が好きだから…ーーーー幸せを祈ってる)
あの時に思った気持ちに偽りは無い。
『律季…好きだったよ』
再会したあの日、美琴が泣きそうな笑顔でそう言った。
好き“だった”。
(美琴の中では、すでに過去の話になったんだな…ーーー)
あのまま上手くいっていたら…俺達はどうなっていたのか。
いつか来る別れに、自分はどう対応したのだろう。
あの幸せな時間から、抜け出せたのだろうか。
――――そんな戻らない日々を…、
もしもの未来を考えたところで…意味なんてないのに。
(新太が、邪魔しなかったら…ーー美琴は、離れていかなかった?)
そんな考えと同時に、心の中ではそれは違うと打ち消す自分がいた。
(いや、遅かれ早かれ…別れることにはなっていたはずだ)
だから決めたんだ。
美琴には、絶対に幸せになってもらいたいから…、
俺は美琴を諦める努力をすると――――。
それなのに、上手くいかない。
感覚が麻痺しているみたいに、以前の自分に戻りきっていない。
「あいつらが早く付き合えばいいのに…」
新太と別れて歩き出しながら、律季は呟く。
(美琴の笑顔を見れたら吹っ切れるきがするのに…ーーー。)




