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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第三章】
183/250

斗亜のバイト先で

「そっか、美琴帰ってったんだ」

律季は飲み物に視線を落としながら、言った。


「…うん」

向かいの席に座っていた新太も、ただ頷く。


「寂しいな」

律季がそう言うと、新太の頭の中で、美琴の声が聞こえた。


『そりゃあ…嫌いになって別れた訳じゃないからね』


「…別に」


「素直じゃねーな、新太は」

律季が素っ気なく言う新太に、苦笑する。

「今更なんだよ、その反応」


新太は顔を上げて、律季を見る。



「無理やり、俺から奪ったくせに」

微笑んで、律季が言う。



「律季、あんまいじめんなよ」

飲食店の制服を着た斗亜が、二人の前に立つ。


「いじめてねーし。てか斗亜(おまえ)は、マジメに仕事(バイト)してろ」


「してるだろーが」

そう言いながら、二人のグラスに水を注ぐ。



「新太は美琴が好きなんだろ?」

律季が気持ちを見透かすように言う。



(美琴はまだ、律季(おまえ)が好きなんだよ…)

悔しくて口には出せず、新太は心の中で言う。


「…――――」

(もしかしたら俺は、律季の代わりだったのかもしれない)



「あの…、ちょっと良いかな?」

黙り込んだまま新太を、律季はなぜ答えないのかという顔で見ていたとき、突然声をかけられて二人は同時に顔を上げる。


「君たち暇?これから私達とどこか遊びに行かない?」

「てか、すごいかっこいいねー、彼女とかいる?」


「いないですよ」

律季が微笑んで応える。

新太は、そんな律季に感心していた。


(なぜ知らない女に突然話し掛けられて、笑顔で対応できるんだ?)




「え、マジで?てか大学生かな?」

見るからに大学生な、彼女達二人は、スタイルも良く、可愛らしい顔立ちだった。


声をかけてくるあたり、自分が可愛いと自負しているのだと律季は冷静に判断する。


「いや、高2」


「えっ!高校生?――――全然良い!」

「大人っぽいねー!」


キャピキャピとテンションの上がる女子大生に、堪らず新太は席を立った。



「新太?」


「帰る」

会計伝票を手にすると、不機嫌そうに新太はとレジへ向かう。


「ごめん、お姉さん達。―――またね」

律季は、新太を追うために彼女達に愛想よく手を振って別れた。






「律季…彼女いないとか嘘つくなよ」

追い付いた律季に、新太が怒ったように言った。


「嘘じゃねーし。由希ちゃんとは別れた」

なぜ怒っているのか分からなかったが、律季は新太に話す。


「え?」


「今は彼女募集中…――――なんて、な」

力なく笑ったあと、律季は真顔になって言った。


「なんかもう、面倒くさくなったわ…彼女とか―――」


(誰かと付き合うとか…そんなもの、今の俺には必要なかった)



もっと気軽に、割り切らないとダメなのに。

以前の自分なら、容易くできていたはずだったのに。



(なんだろう…上手くいかないんだよな…ーーーー)


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