きっかけ
「悔しいんだろ?」
中間試験の結果を見て、斗亜がからかうように律季に話し掛ける。
「ーーー…まぁ、悔しくないと言えば嘘になるかな」
律季が珍しく、真面目に答える。
「斗亜…ところでニヤついてるところアレだけどさ、
お前、補習決定だよな?」
負けた律季を嬉しそうに見る斗亜に苛立ち、
律季は反撃する。
「あ、やべ!忘れてた…」
斗亜が、赤点の現実を思い出してガッカリする。
「残念だな…、夏休みうちの別荘に今年もお前と行きたかったのになぁ」
律季が笑顔で、斗亜の肩に手を置くと愉しそうに囁く。
「代わりに、美琴でも誘ってみるかなー」
「は?…ダメダメ!そんなの俺が許さねぇからなっ」
斗亜が青ざめて、律季に言う。
「補習、頑張れよー」
律季は、笑いながら帰っていった。
(マジか…)
斗亜は、これからの夏休みが地獄のように感じた。
「ちょっとそこのあなた!」
帰り道、一人で買い物をしていた美琴は、そんな声に振り返る。
「今、時間大丈夫かな?」
見るからに30歳後半ぐらいの、キレイなお姉さんが美琴に声をかけてきた。
「変な勧誘ならお断りです!」
ハッキリ言って、美琴は横をすり抜けようとした。
「そんなんじゃないのよ、私はーーー」
目の前に差し出された名刺を見て、美琴は顔を上げる。
「これって…」
「良かったら、バイトしてみない?」
キレイなお姉さんは、ニッコリ微笑んで言った。




