夏休みもあと半分
「新太がまさか、本屋でバイトするとはな…」
いつものファミレスで斗亜が呆れたように言う。
「それで俺が誘った飲食店の面接ドタキャンしたわけ?」
「いや、それはちょっと…家の用事ができて…」
曖昧に答える新太に、斗亜が笑って言う。
「ま、気にすんなよ!俺は飲食店の方が楽しそうだなーと思っただけだし。今度食べに来いよな!」
「あぁ、うん…」
新太が、返事をしながらスマホの画面をチラチラ見る。
「なんだよ、お前誰かと約束とかしてんの?」
斗亜がそう言うと、新太は答えに困る。
「いや、別に…」
(約束は、していない。)
ただ、家に帰れば美琴に会える。
夏休みもあっという間に残すところ半分だ。
(時間が足りない…――――)
もっと一緒に居たい。
(美琴は…――――あと何日、日本に居るんだろう…)
怖くて聞けない、滞在期間。
(聞いたらすぐにでも、帰ってしまう気がして…ーーーー)
「そういえば、美琴が帰ってきてるんだってな」
「え…」
斗亜があまりに自然に言うので、新太は拍子抜けした。
「律季から聞いた」
飲み物を口許に運んでから、斗亜がゆっくりと言った。
「新太、お前今週末の花火大会誘えば?」




