分かる?
「なぁ、」
アルバイト情報紙を眺めながら、新太は口を開く。
「一度フった相手に近づいて来るのって…下心あると思う?」
思いがけない話に飲んでいたコーラを喉に詰まらせて、
咳き込みながら斗亜が新太を見る。
「はぁ?何だよ急に…」
「好きってことかな…思わせぶりな態度とってきて…」
「いや、でも俺なんか絶対好きなわけないし…」
「試されてるのか?―――何のために?」
ブツブツと独り言を続ける新太に、斗亜は落ち着いて言う。
「誰の話?蛍か?」
「美…―――」
(美琴とは、言えないか。誰にも言えないんだった…ーーー)
「み?まさか…ーーー深雪早子?」
斗亜が予想外の答えを導き出した。
「深雪さん…?――――そう!」
(とりあえず、そういうことにしておこう…)
軽い気持ちで、新太は嘘をついた。
「深雪とお前いつの間にそんなことになってたんだよ?」
「例えば、会いたかった…とか言ってきたり、朝起きたらベッドに潜り込んでたり…とか…」
斗亜の問い掛けに珍しく答えることなく、
新太が一方的に話し出した。
「は?何だよそれ、妄想だろ?」
「妄想…」
(じゃないんだけどなー………。まぁ深雪さんじゃないから斗亜には伝わらないよなー)
「ごめん、今の話忘れて!」
新太が何かを諦めたように、斗亜に言った。
「はぁ?」
「―――ってことがあったんだよ…」
律季の部屋に来ると、斗亜が今日の不可解な出来事を話す。
「深雪と新太が?」
斗亜の説明も意味がわからなくて、律季は混乱しつつも尋ねる。
「あり得ないだろ、それは」
「そうだよなー、話の辻褄も合わねぇしな」
斗亜が胡座をかいて座ったまま、頬杖をつく。
「でも何かに悩んではいたんだ」
「ふーん…」
律季はそう言うと、黙って携帯電話をいじり出した。
(俺の考えが当たっていれば…ーーーだけど)




