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秘密と提案
「おはよ、新太」
「あ、斗亜!おはよう」
朝いつものように斗亜は新太に挨拶をした。
しかし新太の表情が、恐ろしく明るい。
「なんか、良いことでもあったのかよ?」
気になった斗亜は、新太に尋ねる。
「え…なんで?」
なぜバレたんだとでも言いたげに、新太は斗亜の顔を見る。
『皆には、言わないで。私が帰国してること…ーーー』
昨晩美琴に言われた約束を思い出して、新太はぎこちなく答える。
「別に、良いことなんてないよ。ただ、もうすぐ夏休みだなーと思って」
「ふーん」
納得したのかしていないのか、斗亜はそれ以上聞いてこなかった。
(早く…早く家に帰りたい。美琴のいる、家に…ーーー)
「そういえば夏休みって、新太何すんの?」
「何って…別に」
「俺も。律季は彼女と過ごすだろうし、暇だよなー」
退屈そうに斗亜が嘆く。
「バイトでもするかなー」
「バイト?」
「あ、新太もやるか?」
(バイト…か…ーーーー)
「やってみようかな…」




