家族
「あら、美琴!」「元気してたか?」
その夜、仕事から帰った舞子と真太は美琴が家に居て驚きと喜びの声をあげた。
「お母さん、パパ…、留学のこと急に決めてごめんね」
美琴が両親に頭を下げる。
「美琴が決めたことだから、私たちのことは気にしないで」
舞子が微笑んで言う。
「こうして家に帰ってきてくれるし」
真太も、嬉しそうに言う。
「新太なんて、美琴が居なくなってから毎日お通夜みたいな顔してたのよ?」
舞子がからかうように言うと、
「ちょっと母さん、何ワケ分かんないこと言ってるの!?」
新太が動揺して、大きい声を出す。
その日、珍しく四人で夕食を食べた。
「新太」
夕食後、部屋に戻ろうとしていた新太を美琴が呼び止める。
自分の名前が呼ばれただけで、こんなに幸せを感じるなんて…、新太は驚いていた。
「なに?」
部屋のドアに手をかけたまま、美琴の方を向く。
「私、新太に会いたかった…」
一瞬ドキリとしたが、新太は美琴の言葉に期待しないように努める。
(どうしてそんな台詞言うんだ…ーーーー)
「…うん、俺も会いたかった」
(美琴は、“弟”としてそう言ってるんだって分かってる)
――――もう、あんな過ちは繰り返さない。
(本当は、会いたくて会いたくて…堪らなかったよ)




