その後の結果
放課後、
中間試験の上位50人が、廊下に貼り出された。
「え、ちょっと…相馬美琴って…あの編入生の?」
「嘘…、律季くんより前に名前がある…」
一年生の女子が、結果を見てざわめく。
中等部時代、
いつも当然のように一位を独占していた律季の名前が、
二位に書かれていた。
そして、一位は…あの“サボり魔”の相馬美琴だった。
「カンニングじゃないの?」
「そうに決まってる!」
そんな言われようでも、
美琴とここでは“他人”である新太は、庇うことも出来ず、苛立ちながら結果を見上げる。
(美琴がカンニング?あり得ねーし)
そこには、勿論新太の名前はない。
美琴はすでに帰宅していて、この場に居なかった。
「ーーー新太、載ってた?」
不意に声をかけられて、振り返ると、蛍が立っていた。
(蛍…)
新太は、蛍を黙って見下ろす。
「ちょっと…良いかな?」
蛍が気まずそうに話し掛ける。
「うん」
新太は素直に頷いた。
蛍が中庭を歩きながら、話し出す。
「久しぶりだね」
「…うん」
「新太…、ーーー私達別れたのかな?」
「蛍は、別れたいんだよね?」
蛍の質問に、新太も質問で返す。
「そうじゃなくて!蛍は新太の気持ちを聞きたいの」
「何だよ、それ…」
「どうして“別れたくない”って、新太は言ってくれないの?」
「何で?蛍が別れたいって言ったじゃん」
蛍の言い方に、新太はカチンときた。
「本気で言ってないよ、バカ」
蛍は目に涙を溜めながら、言う。
「引き留めて欲しかったのに…」
「何だよそれ…」
(俺の反応を…試したってことか…?めんどくせぇ…)
「だって新太…蛍といても蛍を見てないから」
「え…」
新太は、蛍の言葉に若干びくっとした。
「気付いてないとでも思ったの?ーーー新太…蛍のこと本気で好きじゃなかったんでしょ?」
「そんなことないよ、俺はちゃんと蛍を…」
自分に言い聞かせるように、蛍に話し掛ける。
でも、そんな新太の言い分は、すぐに蛍に遮られた。
「ーーーそれでも良いと思ってた。新太は優しいから、私が気付かないふりをしてれば、それで…」
「蛍…」
「でも…気付いちゃったんだ…。そんなことしても私…虚しくなるだけだって」
蛍の目から涙が溢れだして、笑顔をつくっていた蛍の頬へつたう。
「他に好きな人、いるんだよね?だから…別れよう」
蛍は笑顔で、新太を手離そうとした。
「ごめん、蛍…。俺、蛍のこと大事にするから…頼むから別れるなんて言わないでよ…」
新太の必死な気持ちが、伝わってきた。
「え、新太…?」
まさかの新太の態度に、蛍は戸惑った。
「俺、変わるから…ちゃんと…」
「新太…っ」
蛍は新太に抱きついて、泣いた。
蛍は、あの新太が自分に感情をぶつけてきたことに感激していた。
フラれると思っていた分、嬉しくて涙が止まらなくなる。
今度こそ、蛍は新太の気持ちを手に入れたのだと思っていた。
ーーーー新太が…どんな想いで懇願していたのかも知らずに…。




