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会いたい
“美琴、久しぶり”
“美琴、元気かな?”
暑い日が続く、7月。
帰り道を一人、歩きながら新太は、メールを作ろうと指で文字を作成する。
そして、作成しては…全てを削除する。
(あんなことをしておいて、今さらどんな風に美琴に連絡ができる?)
今までは…、会いたいと思えば、三秒で会えたのに、
今は…どんなに会いたいと思っても会えない…ーーー。
美琴の体温…香り。
抱き締め返してくれた腕の細さ…。
気付けば、夏休みまであと一週間になっていた。
新太は、去年の夏休みにみんなで海に遊びに行った日のことを思い出す。
楽しかったのに…ーーーー。
―――――もう…あんな日は来ない。
家に入って、誰もいない家に帰る。
「ただいま…」
居ないと分かっていながら、新太は癖で、つい呟く。
「おかえり」
―――――驚きのあまり、カバンがボトッと新太の手から落ちる。




