斗亜と七星
「うわ、お前それ…変態じゃん…」
翌朝、あまりに元気がない新太に、理由を聞いた斗亜がキッパリと言う。
「つか、お前…。美琴に未練ありすぎ…ーーー」
斗亜は呆れたような目で、新太を見る。
「いい加減、他の女にしろよ…」
「斗亜に言われたくない…」
「そもそも、サボった斗亜の代わりに図書委員の仕事したんだけど?」
新太が睨んで言うと、斗亜の表情が雲った。
「あぁ、悪ぃ…忘れてた」
―――――斗亜は、昨日の放課後を思い出して黙る。
「蛍のこと、どう想ってるの?」
七星に捕まって、斗亜は面倒臭いと思いながら相手をする。
「お花見、結局会えなかったって蛍怒ってたけど?」
「約束した覚えもねーよ」
素っ気なく斗亜が答える。
「それに、俺は蛍のこと何とも想ってない」
「じゃあ瀬戸新太は?蛍とやり直す気はないの?」
「そんなの、俺が知るわけねーだろ?」
七星の話はいつも“蛍”だ。
「何なんだよ、久しぶりに話し掛けてきたと思えば…ーー」
「お前、俺に何を期待してんの?」
斗亜の瞳が七星を映す。
「私は、ただ蛍に幸せになって欲しいだけ…ーーー」
七星はすぐに視線をそらす。
「相変わらずだな、お前。」
斗亜はそれだけ言うと、背を向けて帰っていく。
『お前、俺に何を期待してんの?』
自分が言った言葉が、自分に返ってくる。
(俺は、何を期待してたんだろう…七星に――――)




