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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第三章】
166/250

蛍と雫

「新太!」

公園の近くに待ち合わせてた蛍は、新太の姿を見つけると、表情がぱぁぁっと明るくなる。



「あのさ、蛍…」

その態度は好意的なのが明らかで、新太は蛍に言いにくそうに話し掛ける。


「ねぇ、新太。新太は相馬さんが好きなんだよね?」

それを阻止するように、蛍が切なそうに笑顔で言う。



「?」

蛍の意図が分からず、新太は一瞬固まる。

「―――うん…」


「蛍はね、新太と仲良くしたい」

新太との距離をつめながら、蛍が笑顔で言う。

「友達として、なら良いでしょ?」


「それすらも、許されないの?」


「―――…」

新太は、言葉を探した。

蛍を傷付けないように、そして自分も罪悪感を感じないような言葉。





「新太?」

考え込む新太を呼ぶ声がした。蛍の後ろから、誰か歩いてくる。



「――――…木下」


「あ、ごめん“お友達”と一緒だったんだ?」

蛍が振り返ると、雫が明るく言う。


「私は新太と美琴と同じ中学だった、木下雫。よろしくね?」


「はぁ…」

話の途中に突然割り込まれて、蛍は不快に思いながら返事をする。



「新太、ちょうどよかった!美琴のことで話したいことあったんだ!」



「え、ちょっと新太…」

「ごめん!蛍、また連絡するから…」

二人を引き裂くように、雫が強引に新太の腕を引っ張っていく。





「ごめん、嘘」

しばらく歩いて、雫はパッとつかんでいた腕を離す。


「嘘?」


「“美琴のことで”なんて言って、私はただ…あの子から新太を遠ざけたかっただけなの」

雫が、新太に困ったように微笑みかける。


「新太が、困っていたような気がして…」

(それも、“嘘”。そんな恩着せがましい理由じゃない。本当はシンプルに、“元カノ”と一緒にいる新太なんて見たくなかったから。)



「うん…」

雫に言われて気付いたかのように、新太はゆっくりと口を開く。

「困ってたかも…」



(蛍とは“友達”にもなれない気がして、返事に困ってた)


本人には、まだ言えていないけど…。


「とりあえず、ありがと木下」




「新太…」


(好きです…。私は新太が好き…――――)


その、たまにしか見られない笑顔も。

人を傷付けたくなくて、はっきり言えないところも。




「美琴と連絡とってる?」


「あ、うん。たまに…」

言いながら、雫は携帯電話を取り出す。

「この間友達に誕生日パーティーしてもらったんだって」


そう言って、新太に先日送られてきた画像を見せる。


(美琴…美琴…)

久しぶりの美琴の姿に、明るい美琴の笑顔に…、

新太の想いは、どんどん溢れてくる。


「新太と美琴…何かあったの?」

画像を愛おしそうに見つめる新太に、雫は気になっていたことを聞いてみた。


「美琴が留学したの、新太と関係ある?」


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