花見の噂
「花見?」
「今年は珍しく遅咲きだし、まだ桜も見頃じゃん?」
律季が新太と斗亜のクラスに来て、突然花見に誘う。
「律季、お前なんか企んでる?」
怪訝な表情をして、斗亜が律季を窺う。
「別に?由希ちゃんも一緒に行くし、お前らにも紹介しようかと思って」
「え、何々?花見?蛍も行きたいなー」
いつのまにか新太の席に、蛍が顔を出していた。
「え、蛍も?それは無理」
律季がハッキリと断る。
「なんでよぉ、律季のケチー皆で行った方が絶対楽しいのに」
蛍がクラスの女子に同意を求めて、なぜか二組の女子が花見に参加するという流れになってしまった。
「瀬戸くんに、律季と斗亜、この三人と遊べるなんて滅多にないからすっごく楽しみー」
「来週の土曜日だよね、私気合入れてくー」
キャピキャピとはしゃぐ女子達に、律季はため息をついた。
「おい、どーすんだよ、アレ」
斗亜がますます不機嫌になる。
「まさか、否とは言わないよね?律季?」
蛍が勝ち誇った顔で律季に微笑む。
花見の噂は学年中に広まり、彼らのファンクラブの女子達も行く気になっていた。
「なんか、大事になってねぇか?」
金曜日の放課後、斗亜は律季を睨み付けた。




