新太
「今日デートだったんだって?」
美琴が当然のように新太のベッドに寝そべりながら言う。
「なんで美琴が知ってんだよ」
椅子に座っていた新太は、そんな姉を見ながら諦めたようにため息をつき、言う。
「え、律季から聞いた」
美琴が雑誌を読みながら、何気なく答える。
「へぇ、例の勉強会、やったんだ?」
複雑な気持ちを抑えて、新太は美琴に尋ねる。
「新太?まさか、仲間外れになって拗ねたの?」
美琴が笑って言うのを見ると、新太はますます惨めに感じた。
「どうせ、俺が居たら美琴は帰ってただろ?」
「そうだね、帰ってた」
どこかで否定してもらえると期待していたのか、
新太は、美琴が即答したことにショックを受けていた。
「私達が姉弟だと知られたら、新太だってめんどくさいでしょ?」
「…うん」
「ホタルちゃんだって、傷付くと思うし」
美琴のその言葉に、新太はつい抑えきれなくなってしまった。
「なんで?」
新太がうつ向いたまま、低い声で呟く。
「何が?」
美琴は首をかしげて、新太の様子を伺う。
「美琴は…他人の傷は気にするんだ?」
(俺のことは、全く気にしないくせに…)
「なんか新太、最近変だよ?ーーー彼女と喧嘩でもしたの?なんならお姉ちゃんが相談にのるよ?」
新太の言葉の真意が読み取れず、
美琴はベッドから起き上がると、椅子に座っていた新太のもとに歩み寄り、頭を撫でようとする。
「やめろって!!」
そんな美琴の腕を、新太は乱暴に振り払う。
「ごめん」
美琴は、振り払われた右腕を左手で押さえながら、謝る。
「いや、ごめん…」
新太もすぐに、やり過ぎたと反省した。
「ーーーでも、大丈夫だから放っておいて」
「そうだよね、ごめん」
美琴はそう言うと、新太の部屋から出ていく。
新太は、美琴が出ていくと、ベッドにうつ伏せになった。
(美琴のにおいがする…)
さっきまで美琴がいたぬくもりを感じながら、
新太は今日のデートを思い出すーーーー。
「ごめん…」
蛍の部屋で、良い雰囲気になったのに、
キスをしても、その先には手を出せずに新太は謝った。
「なんで?蛍のこと、好きだよね?」
蛍は、潤んだ瞳で新太を見つめる。
「好き…だよ…」
新太は、蛍を優しく抱き締めながら言う。
「新太、もういいよ…」
新太の腕をそっと押し退けながら、蛍が静かに言った。
「別れよっか、私達…」




