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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第二章】
141/250

クリスマスの夜に【後編】(律季・美琴編)

「あ…あの…―――」

美琴が恐る恐る声をかけても、律季は沈黙で返す。




「お、怒ってる?よね…」

「別に、怒ってないよ」

そういう律季は、明らかに穏やかではない。


(―――その態度は、どう見ても怒ってるじゃん…)

美琴は心の中でツッコむ。


「シャワー浴びてくる…」

「あ…ぅん」


上半身裸の律季が、宿泊部屋についているシャワールームへと消えると、美琴は溜め息をついた。


(なんで…こんなことに…)

事の発端は、美琴(じぶん)が拒絶したからだと理解している。



(――――だって…あんな痛いと思わなかったんだもん)


全裸のまま布団を胸まで押し当てて、ベッドの上で美琴は体操座りをする。



有名なイルミネーションも見れたし、

手も繋いで律季と幸せな一時(ひととき)を過ごして…――――。


宿泊場所に着いて、ついに律季と結ばれると思った。

でも、現実はそんな甘くなかったのだ。


(途中までは、すごく気持ちよかったのに…)





バタンと扉の音がして、律季がシャワールームから出てくる。



「律季…さっきはごめん、私…」


「いや、俺もごめん。」

律季に謝られて、美琴が呆然とする。


「焦ってた…早く美琴を自分のものにしたくて」


「律季…」

(なんだろう、すごく愛おしいなぁ…)

―――律季の言葉は、美琴の心を熱くする。



「ごめん、私…次は()めてって言わないから」


「どうだか…」

からかうように律季が大袈裟に溜め息をつく。


「本当だよ、次は我慢する!」

「我慢、って…」

律季が苦笑いしながら、ベッドに入る。


「ね、今日はこうして一緒に寝てもいい?」

律季が美琴を抱き締めて、甘えるように囁く。



「うん…」

美琴もそんな律季を抱き締めて、幸せを噛み締めながら眠りにつく。





スヤスヤと寝息を立て始めた美琴を、

眺めながら、律季は美琴の髪にサラッと触れる。


(自分でも、笑えてくる…)




冷えきった家庭に生まれ育った自分は、

何に対しても執着することはなかったし、与えられたものだけ、望まれたことだけこなせば良いと思っていた。


成績も一番になれと親に言われたからそうしてきたし、

女子が付き合ってくれと言えば、付き合った。


面倒くさい関係(こと)には触れないし、

簡単で、気楽に過ごせたらそれで良かった。



美琴に近付いたのも、

『斗亜の隣に綺麗な子がいるな…つまみ食いでもするかな』

…その程度の、軽い気持ちだった。


中学からの女子に飽きて、編入生の美琴に興味を持っただけ。


(それが、知れば知るほど…ハマってるなんて…)


自由で、予測がつかなくて、強がりで、敵わない美琴に、

気づけば律季は、どんどん惹かれていった。



(――――無防備に寝過ぎだって…)

若干イラッとして律季は、

美琴の頬に手を添えて首筋に真っ赤なキスマークをつけた。


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