休日の約束
「なぁ、美琴?さっきの律季の話だけどさーーー」
「ん?」
放課後、思い詰めた顔で斗亜が美琴に話し掛ける。
「明日、勉強教えてくれるってマジ?」
「斗亜、やる気あるの?」
鞄に荷物を詰めながら、美琴が聞き返す。
「ある!美琴が教えてくれるなら」
斗亜は意気込んで言うと、美琴が顔をあげた。
「私、教えるの下手だよ?」
「それでも、構わん!」
「ーーー高いよ?」
美琴が悪戯に笑う。
「え、金とるのかよ…」
斗亜が一瞬怯むと、美琴が笑う。
「あはは!ファミレスでやろ?私パフェ食べたい!」
美琴は、斗亜と約束をすると、一人で先に帰っていった。
「ーーーそれで?斗亜と美琴は明日二人で勉強会?」
律季が斗亜と帰り道を歩きながら尋ねる。
斗亜は美琴と一緒に帰るつもりだったのに、律季に呼び止められて不機嫌そうに言う。
「律季、絶対来るなよ?」
「なにそれ?フリ?」
律季がふざけて笑いながら言う。
「はぁ?んなわけねーだろ!」
斗亜はそんな律季に苛立ちをぶつける。
「分かった分かった!」
律季が笑顔で斗亜をなだめる。
「ーーー企みが失敗に終わって残念だったな、律季。」
斗亜が勝ち誇ったようにどや顔をする。
「別に?お互い名前で呼びあえる仲にはなれたから、失敗ってわけでもないさ」
だが、律季は涼しい顔で言い返す。
「ーーー!?」
「それに、別に焦ってないから。斗亜みたいに」
律季がニヤリと笑って言う。
「本当、律季いい性格してるよな」
苛立ちを抑えて、斗亜は笑顔をつくって言う。
「ありがと」
「褒めてねーよ!」
新太は、いつも通り、蛍と放課後、街をぶらついていた。
何をする訳でもなく、お喋りして遠回りして帰る。
正しくは、蛍の話をひたすら聞いて帰るのが日課だった。
「ねぇ、新太!明日うちに来ない?」
「え?」
蛍が突然、新太を見つめて言う。
「明日両親も出掛けてるし、家に誰もいないんだ…」
「ーーー…」
新太は、静かに動揺した。
蛍が言わんとしていることを、悟ったからだ。
(それって…つまり…誘ってるんだよな…)
「来るよね、新太?」
蛍は上目遣いで微笑む。
『蛍と俺、付き合ってた』
ーーーー律季の言葉が新太の脳裏をよぎる。
「…うん」
新太は、ゆっくりと頷いた。




