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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第二章】
129/250

つらそうな君の願い

――――どうしてこんな出会い方をしてしまったんだろう。


いっそのこと、実の姉だったら良かったのに。

そうしたら、諦めがついたのかもしれないのに…。



夢の中でも、何度も考えてしまう。

どうにもできない、現実―――…。




「―――らたっ、新太!いい加減起きないと遅刻よ?」


新太の部屋に、そんな声が聞こえてくる。


「ん…美琴…?」

寝ぼけながら新太が目をこする。


視界がはっきりして、目の前には美琴ではなく母親の舞子が立っていた。


「美琴なら寝てるわよ、今日は休ませるわ」

舞子の言葉に、新太がガバッと起きる。


「え?」


「朝方帰ってきたけど、咳が酷いからね。熱は無いみたいだけど」


舞子が新太の部屋から出ていきながら、言う。

「じゃ、私も仕事遅れるから行くわね。戸締り宜しく」


「え、待って。美琴風邪引いてんのに仕事?」

新太が驚いて、母親に問いかける。


「午前だけは抜けられない会議あるのよ。午後は休んで帰るわ、新太は心配しなくて良いから早く学校行きなさい」





起きた新太は、美琴のドアの前に立って遠慮がちにノックしてみる。

「美琴…?」


「新太…入ったらダメだよ、移っちゃう」

呟くほどの声でも、美琴の耳に届いたのか、返事が返ってきた。



美琴はドア越しにそう言ったけど、声を聞いたら新太は顔が見たくなった。



「―――なにやってんの?」

そっとドアを開けた新太は、驚いて訪ねる。

美琴は寝ているのかと思ったら、出掛ける支度をしていたのだ。


「ちょっと…律季の家に行かないと…」

ゴホゴホと苦しそうに咳をしながら、制服を着て、マスクをした美琴が言う。


「は?なに言ってんの?」

驚いて、咳き込む美琴の体を支える。


「約束したから…律季のとこ戻らないと」


それでも部屋から出ようとする美琴に、新太はまたどうしようもない気持ちに襲われる。


(どうして…律季なんだよ……?)



「美琴、そんなのどーでもいいから、寝てなよ」

「どーでも良くない…よ。だって…律季が」



「美琴…」


「新太、放して。………大丈夫、だから」



そんな美琴を見ていたくなくて、新太は抱き締めていた手を放す。


(どうして…――――)




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