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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第二章】
124/250

二人の距離

「美琴…」

薄らいでいく意識の中で、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。



「美琴…」


「ん…」

美琴はうとうとしながら、目を開ける。

ぼやけていた視界がはっきりしてくると、目の前に律季がいて、現実を思い出す。


「あ…、律季ごめん…ありがと」


「うん、なんかもう…限界なんだけど」

美琴がお礼を言うと、なぜか律季が困ったように微笑む。


「何が?」

美琴が首をかしげると、

律季が美琴の指に自分の指を絡めて言う。


「もっと触れたくなる、この状況だと…」


言われてから自分が今、

律季に借りた体操着をノーブラで着て、

さらに下はパンツ一丁で抱き締められていることに気が付く。


「ふぁっ!?」


焦って変な声を出す美琴に、律季は苦笑する。

「いや、なんもしないよ…美琴が嫌がることは」


「い、嫌じゃないよ?」

律季の言葉を否定するように、美琴が言う。


「え…?」

律季の真ん丸の目がさらに大きく見開かれる。


「律季に触れられると、私ね、すごく落ち着くの…」

美琴が照れながら言う。

「美琴…」


「もっと触れて欲しい…」

照れながら潤んだ瞳で上目遣いに言う美琴に、

律季が手を伸ばそうとしたちょうどその時、

保険医がどこかから戻って来た。


「あら?誰?もう下校時刻よ、帰りなさい」

そう言いながら、仕切られていたカーテンを開けられ、

慌ててベッドから出た律季と、布団を頭まで被った美琴に、保険医が首をかしげる。


「何してるの、貴方達」





結局、濡れたブラをして、

体操着とスカートという不恰好な姿で美琴は下校することになった。


「スカートはそんな濡れてなくて良かったわ」

美琴が笑って言う。


「美琴?」

「ん?」


「何かあるなら話して?俺、力になりたいんだ…」

真剣な表情で、律季が美琴を見つめて言う。


「律季…」


「とりあえず、うちに来なよ…。高校(ここ)から美琴の家よりは近いから」

「え、でも…」


「なんか服、貸してあげる」

律季が優しく微笑んで、繋いだ手を引いて歩き出した。







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