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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
120/250

時間延長

「り、律季…?退けてよ」


「どうして?―――美琴は嫌なの?」

美琴の動きを封じ込めて、律季が囁くように尋ねる。




「い、嫌じゃないよ…」

(ただ、この体勢がどうしようもなく恥ずかしいだけで…)



「じゃあもう少しこうさせて?」


そう言いながら律季は、

ベッドに仰向けの美琴をそっと抱き締める。


「安心するんだ、こうしていると…」



その言葉に、美琴は少し胸が痛んだ。

「やっぱり新太のこと、気になる?」


抱き締められたまま、美琴はそっと律季の背中に腕を回す。


「そりゃあ、新太(あいつ)が美琴を好きだって宣言してるからね…気にならない訳ないでしょ」

苦笑いで律季が言う。


「…―――」

(そう、だよね…。)

美琴は何も言えずに黙り込む。


「でも、美琴を信じてるから」


そっと身体を離すと、

律季が美琴にそう言いながらまたキスをした。

「…ん」





「――――で、クリスマスどうしよっか」

しばらくして、二人はクリスマスの話をする。


「あ、うん。―――ここのイルミネーションが綺麗で有名なんだって」


「へぇ、美琴はこういうのが好きなんだ?」

「うん、イルミネーション好き」



「じゃあここ行こうか」

「うん」


しばらく話をしていると、時間はあっという間にすぎていった。


「じゃあそろそろ帰るよ」

律季が時計を見て立ち上がる。

「あ、じゃあ見送るよ、そこまで」

美琴も立ち上がる。


階段を降りていくと、舞子が顔を出す。

「あら、菱川くんも夕御飯一緒に食べていかない?」


「え、いえ…」

遠慮がちに言うと、舞子が困ったように言う。

「あら…張り切って作りすぎちゃったわ…」


「お母さんもあぁ言ってるし、食べてってよ」

美琴がそんな母親に苦笑いで、律季に言う。


「あ、じゃあお言葉に甘えて…」

律季がお礼を言うと、舞子がニッコリ笑って言った。

「嬉しいわー」




「あれ?お母さん、新太は?」

食卓に着いた美琴は、舞子に尋ねる。


「新太ならさっき出掛けていったわよ」

料理を並べながら、舞子が答える。


「ふーん」

(どこ行ったんだか…)

美琴が、空席の新太の椅子をチラッと見ながら考える。






「美味しかったー、おばさんの料理」

家を出たところで、律季が満足そうに言う。

「そう、じゃあまたウチでごはん食べなよ」

美琴が笑顔で言う。


「あ、新太」

美琴が呟くように言う。

美琴の視線の先を辿ると、道の数メートル先に人影が見えた。


「じゃあ、俺帰るね。おばさんに宜しく伝えて」

律季は新太の歩いてくる道に向かって歩き出す。


「あ、うん。じゃあ…」

少しだけ、名残惜しくなりながらも、美琴は微笑んで手をあげる。





「律季、まだいたの」

「夕御飯、ごちそうになってたんだ。」

新太がすれ違う前に声をかけると、律季がすぐに答える。


「へぇ」

「じゃあ、な」

「うん…」


二人はそれだけ言うとすれ違う。


(振り向いたらダメだ…)

律季は心の中で唱える。

(―――絶対に、振り向かない。)


新太が美琴の家に一緒に入っていくところなんて見たくない。



(――――これが“嫉妬”だ…)

ずっと考えていたこの気持ちの“名前”の答えに気が付いて、律季は少し笑った。


(こんな気持ちに、自分がなる日が来るなんてな…ーーー)

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