律季と新太と蛍
「斗亜からかうの、面白いよなー」
必死な斗亜を思い出して、律季が笑う。
「律季、彼女いないって言ってたけど…」
そんな律季に、新太はおそるおそる確認する。
「うん、いないよ?“そういうお友達”はいるけど。」
律季が明るく言う。
「…相馬さんはそういう対象にはならないと思うよ?」
「なんで新太が相馬さんを語るの?仲良くないんだよな?」
律季は鋭いやつで、そう言ったのかどうか、
新太には分からなかった。
でも、律季は斗亜よりも“危険”なヤツであると知ることができた。
「ちなみに、蛍と俺、付き合ってたことあったな」
「え…」
突然思い出したように、律季がさらっと暴露する。
ーーーなぜこのタイミングなのか分からなかった。
新太は言葉に詰まる。
「去年ちょっとだけ、付き合ってたんだ」
ーーー同じ中等部からの仲なんだし、そういうことがあってもおかしくない。
「…そっか」
蛍はかわいいし、律季は人気者だし、
二人が付き合っていても、驚くことではないのかもしれない。
「蛍ってさ、何かと束縛したがるよな?俺的にはそれ重くてさ…」
それなのに、新太は驚いていた。
蛍と律季が付き合っていたという“過去”にショックを受けた自分に、驚いていた。
「新太は優しいから、蛍と上手くいくと思ってたわー」
律季が良かった良かったと、穏やかな表情で言う。
「てか、そういうことは早く言えよな」
「いやいや、普通に言いづらいでしょー」
「律季のくせに?」
「おい新太、それどういう意味だよ!!」
律季とふざけながら、新太は違うことを考えていた。
(俺は…蛍のことを、思っていたより自分の“所有物”として認識していたんだな…)
そんな自分に……驚いていた。




