ずっと言いたかったこと
「律季、話があるの」
珍しく美琴から朝、電話が来た。
待ち合わせの、高校へ向かうバス停前に向かうと、
美琴と、隣に新太が待っていた。
「美琴、と…新太?」
律季は、何となく“話の内容”を察した。
「今まで黙っててごめん。―――実は私と新太、姉弟なの」
美琴は、律季の目を見て言う。
気まずいからか、少しだけ目が潤んでいた。
「は?」
(――――新太と、 美琴が…きょうだい?)
律季は意味が分からず混乱する。
「美琴、血は繋がってないんだって事、ちゃんと説明してよ」
新太が美琴に言う。
「ちょっと待って…」
(血が繋がってないとか…――――え?きょうだい?)
「新太と美琴、血が繋がらない姉弟?」
律季は混乱しながらも、美琴に確認する。
「ちょっと…状況がよく理解できないんだけど」
美琴がゆっくり順に話し出した。
自分たちは小さい頃から姉弟として育てられたこと。
中学卒業してから、お互い連れ子だと知らされたこと。
つい最近、新太の両親と美琴の両親について真実を知ったこと。
「――――今まで嘘ついててごめん。」
美琴が説明している間、律季はうつ向いたままだった。
「でも、私が好きなのは律季だから。」
美琴がそう言っても、律季は何も言ってくれなかった。
「律季…?」
「うん…」
顔を覗き込むと、律季が小さく返事をする。
「―――律季…怒ってる…よね?」
そんな律季に、機嫌を窺うように美琴が顔を近づける。
「ん?―――いや、怒ってるというか、戸惑ってる…」
律季が正直に、美琴に言う。
「でも、“同居”の意味は分かったから少しホッとしたかな」
「ん?」
律季の最後の言葉に、意味が分からず美琴が聞き返す。
「新太から聞かされてたんだ、“同居してる”って」
律季が、苦笑しながら言う。
「えっ!?ちょっと新太っ!」
美琴が驚いて新太を問い詰める。
「どうせいつかバレると思ったし。」
美琴に顔を背けて、新太がしれっと言う。
「美琴は俺と付き合ってるし、美琴は新太に恋愛感情はないんだし、ってことだよね?だから別に気にしてないよ」
焦って新太に詰め寄る美琴に、
律季が安心させるように言いながら、そっと手を繋ぐと新太から自分の元へと自然に引き離す。
「そ、それならいいけど」
美琴が突然手を繋がれて照れながら言う。
「あ、それよりクリスマスの旅行先なんだけどさ」
「あ、うん」
手を繋いだ二人は、歩き出しながら話を変える。
「え、なに旅行って」
新太が美琴の隣に追い付きながら、話に入ろうとする。
「「新太に関係ないから」」
美琴と律季の声がハモる。
「え、ひどい…」
新太が寂しそうに言う。
「そんな表情してもダメ。クリスマスは二人で旅行するんだか…ら」
美琴が新太の顔を見上げて怒ったように言う。
そんな美琴の言葉が言い終わらないうちに、
新太は美琴の手をきゅっと握った。
「あ、おいっ!手、繋ぐな!離せよ」
すぐにそれに気づいた律季が、
新太と美琴の繋がれた手にチョップする。
「律季、メザトイ…」
新太は舌打ちして、手を離す。
そんなその日の朝の三人の登校の様子は、
もちろん高校中の噂の的となったのだった…ー――ーー。




