新太の早起き作戦
「おはよ、美琴」
朝、早目に学校に向かおうとすると、部屋を出た美琴は、
隣の部屋から出てきた新太と鉢合わせになり挨拶された。
(な…なんでいつも寝坊助の新太が起きてるの…っ?)
ボサボサの髪、まだ顔も洗ってないパジャマ姿で、
美琴は赤面する。
――――美琴は新太の前をうつ向いて通り、
慌てて一階に降りると、洗面台の前に立ち、
髪を整え、顔を洗う。
顔を洗っていると後ろに気配がして、
美琴は濡れたままの顔を上げて鏡を見る。
「なに、今さら?」
後ろに立っていた新太が洗面台の鏡越しに笑って言う。
「今までだって見てるけど?美琴の朝の寝起き顔なんて」
「も…もう、なんなの?」
美琴は恥ずかしさを隠すように怒る。
「何って、俺も顔洗おうかなと思って」
「あ、そ。」
素っ気なく言うと、美琴は洗面台から退く。
「あ、ねぇ…――――」
背中を向けて行こうとした美琴の腕をパシッと掴んで、
新太が微笑んで言う。
「今日、一緒に行こ?」
「は?無理だし。――――腕、離して」
美琴は新太の方を向かずに言う。
「美琴が、一緒に学校行くって言うなら離す。」
新太が今度は真剣な表情で言う。
「新太、何言ってるか分かってる?私は、新太とは“他人”なんだよ?」
美琴が新太を説き伏せようと、言いながら新太の方を向く。
「だから一緒には行かない……って」
(――――その表情、しないでってば。)
新太は切なそうに美琴を見つめていた。
―――美琴も新太も、お互い譲らずに目を離さない。
「他人だから、一緒に行っても良いじゃん。俺は美琴が好きなんだし、好きな人を誘って何が悪いの?」
「私は律季と付き合ってるんだよ?てか、新太のこと好きじゃないから断ってるんだけど、なんでわかんないの?」
「嘘だよね、それ」
新太が言う。
「は?」
美琴が即座に聞き返す。
「俺のこと、好きじゃないなんて。大キライなんて嘘でしょ?」
「何言ってんの?いい加減にしないと、怒るよ?」
「怒ってるじゃん、もう」
「新太が変なことばっか言うからでしょ?私はこんなことになりたくなかったのに」
「変なこと、言ったつもりはないけど」
新太は真顔で言う。
美琴は、そんな新太の表情に思わずため息をついて言う。
「――――とにかく、腕、放して」
「分かった」
今度はあっさり離して、新太は洗面台の前に立ち立つ。
(調子狂うなー……新太が、今までの新太じゃないから。)
美琴は離された腕を何となく撫でながら、キッチンへと向かった。




