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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
110/250

美琴の部屋

新太は、コンビニで意味もなくアイスを買って帰る。


『雫、遅くなっちゃったから送るよ』

美琴がさっき言った言葉を思い出す――――。

(―――以前(まえ)は送ってけとか言ってきたくせに)


新太は、美琴が以前のように接してくれなくなったことに寂しさを覚えていた。


コンビニなんて外に出る口実だし、

きっと美琴はその事にも気付いている。




「ただいま…」

玄関をあけて独り言のように呟く。


しーんと静まり返った家に、新太は少し胸が痛んだ。


(こんなことになるなら、あんなこと…言わなきゃ良かったのか…?)


――――――『大キライ』とか『他人だ』とか、美琴にそんな台詞(こと)言われるなんて思いもしなかった。


(俺は…ただ美琴を誰にも奪われたくなかった、律季に渡したくなかっただけなのに――――…)



新太は、静まり返った美琴の部屋をチラッと見て、自分の部屋に入る。


明日当たるであろう数学の課題に取りかかろうとして、

問題集が見当たらないことに気付く。


(あ…教室に忘れてきた…?)


美琴に借りに行こうと、ドアの前まで行く。

ノックしようと手をドアに近づけて、止めた。


(また…避けられるかもしれないな…)


それでも新太は、美琴となんとか話をしたくて、

ドキドキしながらドアをノックした。

「美琴?」


美琴の部屋から返事はない。


新太は、そっと扉を開ける。


美琴はスマホを手にしたまま、

ベッドに横になってすやすやと眠っていた。


「風邪…引くよ?」

新太は布団をかけようと美琴のベッドに近付く。


「―――ぁら、た」

寝返りを打ちながら、かすかに美琴の寝言が聞こえた。


「―――ごめん…」

悲しそうな表情で、美琴が呟く。


新太は、美琴の頬にかかっていた長い髪をそっと耳にかけ、


「俺も、ごめんね…」

そっと呟く。


(俺が…気持ちを伝えたりしたから…苦しんでるんだよね?)


そして、そっと美琴の唇にキスをした。


(でも…もう隠すつもりはないんだ、美琴が好きだって)













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