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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
105/250

屋上での一時間

「美琴、さっきからため息ばっかりだな」

後ろから声がして、振り向くとすばるが立っていた。

「あ…先輩!」


「久しぶりだな!はぐみ祭のベストカップルおめでとう、美琴」

すばるは美琴に笑顔で言う。

「あ…どうも…」

その言葉に、美琴の表情が曇った。



「何、彼氏と喧嘩でもした?」

「彼氏と…ではなくて…」

何気なく聞いたすばるの言葉に、美琴は口ごもる。


「ん?」

「―――弟…を傷つけてしまったんです…昨日」


「あぁ、弟くんね!―――それで、何が原因だったの?」


(何が原因…?)

美琴は昨晩の事を思い出す。


――――居場所が無くなったと思っていた瀬戸家は、自分を変わらず迎え入れてくれて。


――――嬉しかった、感謝してた。


(新太にも、ちゃんとお礼を言おうとして…)


『行くなよ』と、新太が真剣に言ってくれて、嬉しかった。


なのに…

その言葉は“家族”としてではなかった。


――――何年も一緒にいて、私は新太の“好き”な気持ちに気付かなかった。


それが…ショックだった…。






「いえ、なんでもないんです…」

美琴は慌てて笑いながら言う。

「美琴?」

隣に立ったすばるが、驚いたように美琴に言う。

「…本当に?」

そう言いながら、すばるが美琴の頬にそっとハンカチを当てる。


「あ…」

(私…涙…出てる?)

「ありがとう…先輩」

すばるがハンカチを貸してくれる。


「先輩は、いつも優しいね…大好き」

「あああ…ありがとう…」

美琴がハグしながら言うと、すばるは動揺しながら答える。






「あ、二時限目は出ないと…」

「うん」

しばらく他愛ない話をしていた二人は、チャイムが鳴ると屋上から出る。


「先輩、二時限目は何?」

「えっと…古典だったかな」

「えー、私も!」

「一緒だね、先生誰?」

「小橋先生」

「へぇ、俺のクラスは…ーーーー」


話しながら、階段を降りて三階の廊下に差し掛かるところで、すばるは立ち止まった。


「先輩?」

すばるが立ち止まって、前方を見てまま動かない。

美琴は、すばるの視線の先を辿る。



「…新太」


目の前に立っていたのは…新太だった。

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