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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
102/250

家族の時間

「ただいま…」

「お帰りなさい、美琴」


家に帰ると、舞子がいつも通りに迎えてくれた。


その明るい表情に、美琴はホッとした。

(なんで帰ってきたの、とか言われたらどうしようかと思った…)



「夕御飯、一緒に食べましょ!着替えてきて」

「うん」


二階へ上がると、ちょうど部屋から新太が出てきた。

「おかえり」

笑顔でそう言うと、頭をくしゃっと撫でて、新太は一階へと階段を降りていった。

「ただいま…」

乱された髪を手で直しながら、美琴は少し頬が緩んだ。


(――――お母さんも、新太も…いつも通り、優しい)




「今日、モデルのお仕事どうだったの?」

初めて母親に仕事について聞かれて、美琴は舞子が気にしているのは仕事のことではないのだろうと察した。


「社長………ママに聞いたよ、全部」

「そう」

美琴の言葉に、舞子はそっと微笑む。


「美琴、よく聞いて」

「ん?」

食べていた箸を止めて、美琴が舞子を見る。


「美琴は、確かに美緒さんがお腹を痛めて産んだ娘かもしれない。」

――――舞子は、真顔で言う。


「でもね、美琴のお母さんは私なの。美琴は、お母さんの娘なの。」


「お母さん…」

舞子の言葉に、美琴は心が少し軽くなった。



「だからもし、美緒さんと暮らすことになっても…いつでもうちに帰ってきてちょうだい?良い?今までどおり、家の鍵で、ね」

「うん」

美琴は微笑んで頷く。


「美琴、俺は家を出てくなんて反対だからな!」

新太は、そんな母と娘の会話に怒ったように口を挟む。


「美琴の家はここだろ!?ずっと一緒だろ?」

新太は、引き留めようと必死だった。


「新太は、本当にお姉ちゃん子よねー」

舞子が笑いながら、新太をからかう。


「は?」

ハッと我に返ると、新太は恥ずかしそうにさっさと席を立つ。

「ごちそうさま」






「新太?」

コンコンと珍しくノックをして、美琴が新太の部屋に入る。


「なに?」

新太が数学の課題をしながら美琴に尋ねる。



「新太、ありがとね」

美琴が笑顔で言う。

「なにが?」


「いつも、優しくしてくれて」

「なにそれ、こわい」

ドキッとしたのを隠すように、新太がぶっきらぼうに言う。


「怖いって何よ、ヒトがせっかく素直に感謝を…」

美琴が不機嫌にそう言いかけると、

「そんなの要らないから、行くなよ…」

新太が美琴を見ずに言う。


「新太は、お姉ちゃん子だよねー」

クスッと笑って美琴が言うと、

「違うよ?」

立ち上がった新太が美琴をクローゼットのドアに押し付ける。


「だって俺、ずっと美琴が好きだったから」




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