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想いの違い
「ちょっと待って、今…」
(私のことが、好き…って言ったの?)
瀧川 斗亜の言葉を、
相馬 美琴が聞き返す。
二人は同じクラスで、仲の良い“友達”だった。
―――少なくとも、美琴はそう思っていた。
「何だよ…今さら」
斗亜は、美琴を壁際に追い込むと、顔を近づける。
「美琴だって、俺のこと…好きだろ?」
「は?―――斗亜、ちょっと待ってよ、私そんなつもりじゃ」
動揺を悟られたくなくて、あくまで平静を保ちながら美琴は斗亜に話し掛ける。
「そんなつもりじゃなかったら、なんで俺の部屋までついてくるわけ?」
斗亜は、すでに“男”の顔をしていた。
――――美琴は自分の軽率さを、ここにきて猛省する。
(ちょっと待って…私はーーー)
斗亜を全力で押し退け、なんとかキスを阻止した美琴は、
ダッシュで、斗亜の家から飛び出した。
(斗亜…ごめんーーーー)
美琴は、自分の家に向かう途中、心の中で斗亜に謝る。
(友達以上には、見れないんだ…ごめん――――)