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ドキドキ隊舎裏タイム

「ごめんなさ‐い、センパ‐イっ。お待たせしました‐っ」

「おせえぞ、ガキ、舐めてんのか」

「本当にごめんなさい、こういうの、初めてだから緊張しちゃって……」

「おい」

「でも、よくよく考えたら私、先輩のことよく知らなくてっ!」

「おいこら」

「お気持ちは嬉しいんですけど、こういうのはもっと仲良くなってからっていうかっ、まずはお友達から始めましょっ!」

「おいてめえこらガキ!人の話を聞きやがれ!」

「え?先輩後輩のドキドキ告白タイムってこんな感じじゃないの?」


 皆さんこんにちは。

 好きな朝食は目玉焼き、フジタツミです。気軽にタッちゃんって呼んでね!

 朝食の最中、不機嫌パイセンから、お前あとで隊舎裏に来いよってどきまぎ告白タイムのお誘いを受け、お嬢とビルという性別年齢不詳の不思議存在と仲良くじっくり朝食に舌鼓を打って嫌というほど先輩たちを待たせた挙句、勇気を振り絞って先輩からの告白に赴いた純情可憐なセ‐ラ‐服後輩を演じて臨んだが、お気に召さなかったらしい。


 まったく、気難しいパイセンだぜ。


「ビビッて逃げなかっただけ褒めてやる」


 偉そうに腕を組んでふんぞり返るパイセン。小物臭がプンプンだ。


「パイセンが折角勇気を振り絞って告白してくれようとしてるのを無碍にするのも悪いかなって。でもごめん、パイセン。俺にはすでに心に決めた人がいるんだ……」

「てめえはずっと何を言ってやがる、この人数を前に気でも狂ったのか」


 この人数なんて誇れる数でもないと思うんだ。パイセン含めてたった六人だ。


「えっ、まさか俺、パイセン以外にも告白されちゃうの……?六人も相手になんて、タツミ壊れちゃう!」

「気色悪いガキだぜ、おい」


 パイセンが顎をしゃくると、五人の男が拳を鳴らしながら前に出てくる。あまり拳を鳴らすのはよくないらしいぞ、やめとけ!


 パイセンを含め、全員が帯剣している。

 おそらくこのあと街の見回り勤務の人員だろう。隊舎内では普段、帯剣は許されない。特別な状況か、見回りなど外に出る時だけ帯剣が許されるのだ。

 だが、剣を抜く気配はまだない。

 さすがに刃傷沙汰は相手も避けたいようで、どうやらこっそりと痛めつけてしまおうという算段らしい。

 剣道三倍段などという言葉がある通り、無手で剣を持つ相手に挑むのは些か無謀だ。

 間合いが圧倒的に違う。ましてや多勢に無勢である。事が過ぎるのを大人しく待つしかない。

 そう思うと、見回りを控えるであろう彼らには制限時間付きだ。見回りにでるまでのわずかな時間。その時間だけを耐えればいいと思えば、幾分マシな気がした。


「暴力はよくないと思います!」


 ゆっくりと後ずさる。幸い相手は俺の前に扇状に展開し、ゆっくりと迫ってくる。後ろには壁があるのみ。四方を取り囲まれるのは勘弁願いたかったので、前を見るだけで済むのは助かる。


「ガキ、てめえ調子に乗りすぎてんだよ。アッシュ隊長のお気に入りだからって分を弁えろや」


 すごいなあ。不機嫌パイセン、呼び出しだとかセリフだとか絵にかいたようなチンピラだ。

 今時こんなセリフを聞くとは思わなかった。


「え、俺アッシュにまで気に入られてんの。困るなあ、モテるって困っちゃうなあ」


 六人全員が顔をしかめる。どうやら全員が俺がアッシュのお気に入りってことが気に入らないらしい。男に気に入られて何が嬉しいんだ。お前ら全員ビルなのか。


「もういい。そいつを黙らせろ」


 どうやら軽口にはもう付き合ってくれないらしい。つれない奴らだ。お嬢のノリの良さを少しは見習うべきである。


「おるあっ!」


 男の一人が巻き舌気味で気勢を上げながら拳を振り上げ迫ってくる。

 その様子がまたしてもコミカルなチンピラのように映り、少し笑いそうになった。

 怒りの形相で迫ってくるも、大振りから放たれる拳も走り寄ってくる足も遅すぎてコマ送りのように緩やかに進んでいく。反撃の手段がいくらか頭に浮かんでは消えていく。


「くそっ!くそっ!」


 真っ先に殴りかかってきた男が大振りなパンチを繰り返す。いずれも右へ、左へと上体をずらせば避けれるような稚拙なものだった。


「なにしてやがるっ」


 痺れを切らしたお仲間の一人が加わるも、この男のパンチも大して変わらない。

 労せずとも避けれるし、無防備な腹や背中にぶちかましてやりたい。


『剣鬼』アッシュに憧れ、この部隊に所属されたとしては力不足にも程がある。能力としては一般人と大して変わらない。


 お嬢の隊員を家族のように思っている。その言葉が彼らを殴ることを踏みとどまらせた。

 先に手をあげたのは彼らであり、反撃しても正当防衛としてまかり通るだろうが、傷ついた家族を見るお嬢はきっと悲しむだろう。そんな顔を見たくないと思うと、自然と手が引っ込む。

 つくづく自分はお人好しなのだ。


 気づけば四人の男が俺を殴ろうと取り囲んでいるが、一向に攻撃が当たる気がしない。

 ここ数週間ほぼ毎日、どれほど息が切れようと、足がもつれようと馬鹿みたいな速度で剣を振り続ける地獄の鬼の攻撃をひたすら避け続けるというスパルタ特訓のおかげで、動体視力や体力面は大きく向上したらしい。嬉しくない。とんだ怪我の功名である。


 俺にパンチが当たるよりも先に殴りかかってきた男達はすでに息を切らし、たたらを踏む始末。

 痛い目を見せてやると意気込んだ以上、攻撃さえも当てられなかったとあれば彼等の沽券に関わる。

 メンツを保つためにも、どうにかして俺に泡を吹かせたいと思うだろう。


「くそっ、くそっ、くそがああっ」


 男の一人が膝に手をつき、汗だくで咆哮を上げる。

 舐めてかかった相手に想像以上に手間取り、こんなはずじゃなかったと悔いているだろう。

 そしてそろそろと気づくはず。なりふり構っていられない、もっと手っ取り早くこのガキを痛めつける術があるじゃないか、と。


 ‐‐そろそろ、頃合いか。やだなあ、痛くなければいいが。


 一番速度の遅い男の拳を避けず、顔で受ける。

 大げさに吹き飛び、背後の壁へとぶち当たって無様に転げる。


「へ、へへっ」


 男達の口から昏い笑みが零れる。加虐性を帯びた攻撃的な昏い笑み。

 自分たちの優位を確信し、無様に転がった生意気なガキをじわじわと殴って蹴って痛めつける。

 身体を丸めてカメのように這いつくばるガキを嬲りつける。


 じっくりと時が過ぎるのをひたすらと待つ。彼らが満足いくまでか、職務を思い出し見回りにいくまでか。ただひたすら暴力の嵐に晒されながら、頭の中で幸せな事を考えていた。

 灼けるように痛む背や腹の苦しみを忘れようと、いろんなことを考えた。

 お嬢は今頃何をしているのだろう。そういえば仲間たちは今はどうしているのだろう。ギンやハクは今もなお『賢狼』と共にいるのだろうか。

 いろんなことを考えているうちに、嵐は過ぎ去っていた。


「はあっ、はあっ、くそがっ」

「これに懲りたら生意気な口効くんじゃねえぞ」


 肩で息をし、舌打ちをかましながら男達は立ち去ってゆく。

 ゆっくりと満身創痍の身体を起こし、壁にもたれかかる。

 頭を丸めて身体で庇っていたおかげで顔に大きな怪我はないようだが、口中には鉄錆のような味が広がっていた。

 不快感に苛立ち、口端を手の甲で拭うとべっとりと血がついた。


「手酷くやられたわね、坊や」


 まだ残ってた奴がいたのかと顔を上げる。ビルだった。


「見てたのか」

「ええ」

「どこから」

「最初から」

「じゃあ止めてくれよ」

「嫌よ。私だって痛い目にあいたくないもの」

「薄情なこって」

「あら。じゃあ医務室に連れて行くの、やめようかしら」

「すんません、お願いします連れてってください、お優しいビル様」

「なんだ、元気じゃないの」

「全然。これっぽっちも」


 喋るたびに腹が、口が痛む。心底不快で、ふと自らの身体の事を思い出す。


 不死。

 実態は死ねば傷も塞がり、万全の状態へと回復する反則級の治癒機能。

 一度死ねば、この傷も不快感も彼方へと消え去るだろう。自死するのも容易い。


 だが。


「死なないでくださいね」


 この世界で真っ先に出会った見ず知らずの赤の他人である俺を労わってくれた少女の言葉が消えないのだ。


「あ‐……」

「どうしたの?殴られ過ぎて頭おかしくなった?」

「ひでえ言われよう。まあいいや、とにかく医務室とやらには連れてってくんねえか?

 今日が休みでよかったわ、ゆっくり休ませてもらうか」

「肩はいる?」

「欲しいっす」


 ビルの肩を借りながら、医務室へと案内される。

 彼の身体は見た目通り華奢な肩だった。体重を預ければ転げそうなほど非力だ。


「ねえ坊や、どうしてやり返さなかったの?」

「あん?」

「言ったでしょ、最初から見てたって。坊やはずっと避けるばかりで、一向にあいつらを殴らなかったじゃない」

「まあ殴ってやろうとは俺も思ってたんだけど、やめた」

「なんで」

「お嬢には内緒にしてくれよ?」

「ええ」

「お嬢がさ、隊の奴らを家族みたいに思ってるって言ってたからさ、あいつらを殴ったらお嬢が悲しむかなって」


 言ってから、しばらく。

 ビルは一向に喋る気配がなく、彼を見れば珍獣を見るかのような奇異の目で俺を見つめていた。


「……なんだよ」

「貴方、馬鹿でしょ」

「賢いとは思わんが、なんだいきなり」

「こういっちゃなんだけど、隊長はね、隊員を家族というよりこの隊という居場所を守りたいのよ」

「へえ」

「あんな隊員一人一人より、きっと貴方一人の方が大事よ、彼女にとってはね」

「はあ、そんなもんかね」

「そんなもんよ。まだまだ坊やも隊長のことわかってないわね。私はわかるわ、きっとあいつらに貴方がぼこぼこにされたって聞いた隊長はまず貴方の身を案じて、安心したらあいつらを八つ裂きにするって意気込むわよ」


 なんだろう、本当にその通りだと思えるほど想像に容易い。


「……なあ、俺がぼこられたってのも内緒にしてくんね?」

「別にいいけど、どうせバレると思うわよ」

「最悪バレてもいいけど、報復はやっぱ俺の手でしねえとな。じゃねえとガキの喧嘩に母ちゃんが出張ってきたみたいでだせえじゃん?」

「……ふふっ、呆れた。坊やもやっぱりまだまだ男の子ねえ」

「すみませんねえ、まだ乳離れできないガキなもんで」

「あら。よければおっぱいでも吸う?」

「いやあ、できればおかんの乳よりお嬢の乳に吸い付きたいっす」


 野郎の乳は勘弁っす。


「言うわねえ、でも隊長に言った怒られるわよ」

「違いねえ」




 ビルの肩を借りながら、這う這うの体で医務室へと辿り着いた。


 医務室かあ、ここまでテンプレの学園物みたいなやり取りをしてきたんだ。きっと美人な養護教諭みたいな人がいるんだろうなあ、なんて淡い希望を抱いてみたり。


 建付けの悪い扉ががたがたと開く。

 室内にはもくもくと白煙が立ち込めていた。


「うおっ、くせえっ」


 一瞬、火事かと焦れば煙の色から何かが燃えた様子もなく、ビルの方も落ち着いた様子。

 どうやら火事ではないらしい。


「ねえ、先生いる?」


 視界を塞ぐほどの煙を何事もなかったかのように、声をかける。


「あ‐?」


 煙の中からは気怠そうな声。


「よかった。タバコを吸う時はせめて窓を開けなさいっていつも言ってるじゃない。来たのが隊長じゃなくてよかったわね」


 ビルは煙で見えない中、迷わず歩を進める。音から察するに窓を開けたようだ。


「うるせえなあ、お前はおかんか。何の用でえ、いつものアレか?」

「先生」

「おっと、すまねえ。別に人がいんのか」


 晴れた煙の中から一人の男が姿を現す。高齢の男。顎にはふさふさとした髭が蓄えている。

 椅子に座って腰を曲げ、ぷかぷかとタバコの煙を吹かしている。


「見ねえ顔だな、あれか、アッシュが連れてきたって新入りか」

「どうも、はじめまして。タツミって言います」

「ぶはっ、ひでえ顔だなあ」


 あまりにも失礼すぎる。初対面の人間の顔を見て笑うなんて。


「頬を腫らして口元血だらけ、こっぴどくやられたなあ」

「笑い事じゃないわよ先生、またあいつらよ」

「ま‐たダストのガキ共か、一度しばくか」


 なんだよあいつら。常習犯かよ。


「ほれ小僧、脱げ」

「やだ、俺のお尻の貞操が!」

「あほなこと言ってっとバカでけえ浣腸ぶっ刺してケツの穴ぶっ壊すぞ。治療だ治療」


 おっかなすぎだろこの爺さん。シャレが通じねえ。


「アッシュのガキが才能あるなんて言いやがるから増長した馬鹿が好き勝手すんだよ。才能に胡坐かいてなんもしねえ馬鹿をてめえが一番嫌ってるくせに、あいつ自身がそれを増やしてる自覚がねえのか、あのガキ」

「相変わらず隊長には辛辣ね、先生」

「弟子を気取るならちったあましな振る舞いしてくれにゃあ俺の名が下がるんだよ」

「先生はアッシュの師匠なのか?」

「先生ってえのやめろ、むず痒い。オウルさんって呼べ、小僧」

「はいよ、オウル先生」

「いい趣味してんなあ、小僧」

「実際医者だしね、先生でいいじゃない」

「やれ医者だの隊員だの、老骨を好き勝手使ってくれやがるぜ、この部隊はよお。

 そういや話は変わるがよ、小僧。お前のパ‐ティにロ‐シっつう弓を扱う爺がいるって本当か」

「ロ‐シ? いるけどもそれがどうかしたのかよ」

「相変わらずあれか、魔物のケツを追っかけてんのかよ」

「あ、ああ……」


 ゴリ。ラット。ロ‐シ。俺が作ったパ‐ティ『夜行』の一員でゴリとロ‐シの二人は同郷で、村を滅ぼした魔物を心底憎んでいる。

 オウル先生はロ‐シを知っているようだし、もしや前にアッシュが言っていた俺に会わせたい三人目とやらはこの人のことだろうか。


「どいつもこいつも人の言うことろくに聞きゃしねえ馬鹿ばっかだぜ、ったく」

「先生はロ‐シの知り合いなのか?」

「知り合いっつうか、兄だ。義理のな。俺の妹があいつの嫁」

「なるほど……」


 確かロ‐シは嫁と娘が‐‐。


「幸せなんて探しゃあいくらでもあんだ。喪った嫁の復讐なんて前にも進めねえことをいつまでもしてねえで、とっとと新しい嫁御でも娶れってんだ」

「いっ」


 先生はロ‐シへの文句を言いながら、俺の身体に湿布を張り付ける。最後の一枚だけは平手打ちと共に。力一杯の平手打ちは筋肉の薄い背中によく効いた。


「それにおめえ、アッシュのガキに聞いたが、あの馬鹿に加えて『狂犬』や『賢狼の巫女』なんて厄介なもんも抱えてるらしいじゃねえか」


『賢狼の巫女』ハクかギンのことだろうか。


「『狂犬』ってあの、『狂犬』シトリィ? 坊やのパ‐ティにいるの?」

「ああ、なりゆきでな」

「……そう」

「『賢狼の巫女』はまだしも『狂犬』なんざ獣人どころか正真正銘獣そのものだからな。しっかり手綱握っておけよ」


 何もそこまで‐‐と思ったが、森の中で火をぶちまけながら呵々大笑する様はまさに獣か、それ以上に厄介なもの間違いなく、オウル先生の言うことを否定できなかった。


「あとあれだ、お前アレか、倉庫にあるやべえ奴の持ち主ってことだよな?」


 倉庫にあるやべえ奴?なんのことだ?


「なんのこっちゃ」

「あれだよあれ、黒い剣。運んだ奴が変な声が聞こえるっつって触りたくねえっつってよ。何人も声を聞いたらしくてそれ以来気味悪がって誰も触りたがりゃあしねえ。『贈り物』かと思ったが、ありゃ魔剣だとかそういう曰くつきのもんだろ」


「あ‐……」


 これまた心当たりしかない。『無明』の事だ。俺の場合、握ればひたすらに殺せ殺せとのたうち回るが、時折静かになるし、何より慣れた。

 確実に四六時中聞こえる殺せ殺せコ‐ルに慣れるなんてやべえ精神状態なのは間違いないが、ともかく慣れたのだ。恐ろしいことに。


「形も見慣れねえし、どんな金属でできてんのかもわかんねえしで、早くも埃被ってんぞ、あれ」


 やめてほしい。人の愛刀をなんだと。


「あとで回収に行くかあ。ありゃあ刀っつうのよ、お爺ちゃん。日本刀、だから魔剣とか言わずせめて妖刀って言ってあげて。そっちのが俺は好き」

「ああ?爺扱いすんじゃねえぞ小僧。俺ァまだそこまで耄碌してねえ」


 あれ?俺の要望は無視?


「ま、なんでもいいわ。とにかくビル、アレか。てめえが戻ってきてるってことは場所わかったんか」

「ええ。隊長にも報告してあるから二、三日中にはおそらく」


 まただ。お嬢と話していたことをオウルの爺さんともしているが、何のことかとビルに聞けばお楽しみにともったいぶられて聞けやしなかった。

 そこまで話すなら教えてくれていいだろう。


「幸いここ数日アッシュの調子もいい。仕掛けるならうってつけだろ」

「らしいわね」


 二人は話を進めるが、事態が呑み込めない俺は蚊帳の外だ。

 なんなら俺の存在を忘れているのではないかぐらいに話を進めている。

 おもしろくない。ベッドにでも潜って眠ろうか。


「っておいおいおいおい、小僧お前何してんだ」

「いや、ちょっと眠くなったから寝ようかと」

「馬鹿言ってんじゃねえ、そこは医療用だ。とっとと部屋帰って寝ろ、っつうか今は朝だぞ。起きたばかりじゃねえのか」

「いやあ、ほら僕怪我人なんで。若いんで寝たら治ります」

「じゃあ部屋帰って寝ろ」

「あんよが痛くて歩けない」

「ふざけんな」

「おやすみなさい」

「ちょっ、おいこらクソガキ起きやがれ、おいビル!っていねえ!どこいきやがった!」


 オウルお爺ちゃんの子守歌は些か五月蠅かったが、ふかふかベッドで安眠できましたまる

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