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布石

 あのあとはまるで、お通夜のような雰囲気だった。

 全員で一塊になり、ワンワンと声を上げ、泣き疲れた者は静かに食卓に戻り、モソモソと無言で食事を貪り、落ち着いたころにはまた別の泣いてる者に感化され、また塊に戻り、泣きじゃくる。

 全員がこんな事を繰り返し、泣き疲れた者から寝落ちしていく。


 気づけば朝を迎え、片付けられないままの無残な食卓の傍らで団子状態で眠っていた俺達は目を腫らし、声を枯らせ、中には化粧を涙でドロドロにした娘もいた。

 そんな娘の顔を「大惨事」などと称しながら、顔を洗いに行けば全員似たような顔をしていた事実に、ゲラゲラと全員で笑い合った。


 やがて片付けから始まり、今度は朝食の準備をと意気込んだ矢先、金髪の気の強い娘から「邪魔」と一言だけ言われ、厨房から追い出されたフラウの姉ちゃんの悲し気な表情がまた傑作だった。

 思わずクリアと顔を見合わせ、忍び笑いをし、落ち込むフラウの姉ちゃんを二人で慰めた。

 朝食ができあがり、全員で談笑しながら食事をしているとフラウの姉ちゃんもいつの間にかケロリとし、会話に参加していた。

 娘の一人がポツリと呟いた「一人だったらもっと辛かった」という言葉がやけに印象に残っている。


 朝食を食べ終え、片づけをし、今日はどう過ごそうかと全員が悩んでいる中で、俺に出ていけという者は誰一人いなかった。

 ゴルド‐を喪った。ゴルド‐を喪わせた。悲しみを全員で共有し、加害者でもある俺でも娘達の一員に加わることを許されたような気がした。


「まあ、当分お店の方は休まなきゃね。ボスがいなくなってそれどころじゃないし」

「かといってあまり長い間休んじまったら、何かあったってバレちまうんじゃねえのか?」


 アッシュにゴルド‐の死を秘匿し、隠蔽などを頼んだことは全員に伝えてある。

 目ざとくアッシュ達のゴルド‐への襲撃を察知した鷲鼻の男‐‐ゲスだったか。ゲイスだったか。

 いや、もしかしたらゲ‐スだったか。とにかく、あのようなゲス男の襲撃や再発を防ぐためだ。


 嘘や秘密は必ず露見する。ゴルド‐の死は必ずバレる。だからこれは時間稼ぎだ。

 ゴルド‐の死がバレる前に、俺の名を売らなければならない。ゴルド‐よりも強く、恐ろしいと世間に印象付けなければならない。

 その為の力は‐‐ある。下地は持っている。


 俺の今ある手持ちの札は、『夜の導くもの』や『夜の王』などと称される化物との共通した容姿。ソレに劣らぬ得体の知れない力、不死身の肉体。

 そして‐‐。


「バレたらバレたでそんときゃあそんときさ。頼りにしてるよ、坊や。私らを守ってくれるんだろ?」


 フラウの姉ちゃんは、流し目で色っぽく頼んでくる。

 頼りにしているというのならば、いつまでも坊や呼ばわりはやめてほしい。

 名前も伝えたのだが、彼女は一向に呼び方を変えてはくれない。

 もはや諦めた。


「任せろよ、姉ちゃん。ただし、俺一人で四六時中十人近い女性を守るってのは限度がある。だからちぃとあてを頼るとするよ」

「そうかい、坊や」

「ん?」


 不意に呼び止められ、振り向く。フラウの姉ちゃんはジッとこちらを見つめるだけで、続く言葉を紡がない。

 かと思えば、ふと笑顔を浮かべ、「いってらっしゃい」と、一言告げた。

 他の娘達も、次々と笑顔で「いってらっしゃい」と口々に言う。


 その一言で胸の奥がカアッと熱くなった。

 前の世界にいた時は、いつもは母を送り出すために自分が言っていた言葉。

 誰かに贈られるのはどれほど久しぶりだっただろうか。

 自分はまたここへ帰ってきていいのだと、自分の居場所はここにあるのだと、そう思えた。


「いってきます」


 自然と笑みを浮かべ、自分もそう言葉を返した。




 戸締りを厳重にし、俺が帰るまで誰が来ても応待せず、屋敷に入れるなと全員に厳命し、屋敷を後にする。

 日中の『夜哭街』は相も変わらず、人気がなく、死んだように静まって人の気配さえろくに感じないが、そんな場所でも目的地へと迅速に向かった俺やアッシュ達はゲ‐スやその配下たちに見られていたのだという。

 おそらく俺には気配を感じないが、人はやはりいるのだろう。そういった気配を探るならば、やはり彼だろう。改めて仲間の重要性を再認識する。


「よう」

「あらあ、僕ちゃん」

「無事だったのね」


 街と『夜哭街』を繋げる暗い路地裏で門番をする、アンとキリィの二人へと声を掛ける。

 二人は気だるげに狭い路地で壁際に身体を預けていたが、俺の声に反応し、すぐに体を離す。

 そういえばこの二人は常にここにいるらしいが、一体いつ寝食をしているのだろうか。

 もしやこの二人も不死身の怪物だったりするのだろうか、などとふざけたことを考えてみる。


「聞いたわよ、ゴルド‐のこと」


 カマキリを彷彿とさせる容姿の女、キリィの何気ないながらも鋭い一言に内心で動揺する。だが、悟られてはいけない。彼女らがゴルド‐の死を知っているかどうかでアッシュの手腕がわかる。


「討ち取れなかったうえに、隊員の数名の死者が出たんですってね。残念だったわね」


 アッシュは無事、隠せたようだ。


「‐‐ああ。まんまとゴルド‐にしてやられたよ」

「そう、お仲間は残念だったわね、お悔やみ申し上げるわ」

「ありがとう」


 キリィが悲痛な表情で伝えてくるが、別にダストや他数名を惜しむ気持ちはないし、伝えられたとこで、別に俺の感情には何の揺さぶりもなかった。


「それで、アッシュや他のお仲間たちは引き上げていったわけだけど、僕ちゃんはどうしたのかしら」

「ああ。俺は別にアッシュ達の仲間ってわけじゃないが、ゴルド‐にちと縁ができてね。しばらくはこっち、『夜哭街』の方に定住しようかなって」

「あらあ、そうなの。歓迎するわ、治安は悪いけど、いいところよ、こちらも」


 アンがねちっこい口調で語る。はて、治安が悪いのにいいところとはおかしな話だ。


「僕ちゃんがこっちに住むっていうなら、シトリィちゃんも連れ戻してくれない?あの娘ったらあっちに入りびたりでこっちには連絡も顔も見せやしないんだから。お姉ちゃんたちは心配で心配で」


『狂犬』の二つ名で恐れられる赤毛の犬の獣人であるシトリィ。そんな俺の仲間もアンやキリィには可愛い妹分らしい。

 二人の表情からシトリィへの愛情の深さが伺える。


「ああ、そのつもりだよ。シトリィにはもっと二人に顔を見せるようにも伝えとく」

「あらああらあ、僕ちゃんは話の通じるいい子ねえ。今度ウチのお店に来なさいよ、安くしとくわ」

「なんなら特別に私たちが相手してあげちゃうわ」

「ははっ、商魂たくましいねえ、シトリィに怒られないようひっそり行かせてもらうわ。そんときゃあよろしく」

「僕ちゃん上手ねえ、シトリィちゃんにバレたら怒られるわよお」

「馬鹿ねえ、アン。可愛い妹分のお気に入りをバレずにひっそりっていうのが興奮するんじゃないの」


 おっかねえなあ。随分イケない遊びがお気に入りらしい。うっかり食われねえようにしねえと。


「と、そういえば二人に聞きたいことがあるんだけどよ」

「なあに、坊や。生憎と今夜は予定があるからデ‐トの誘いにはのれないわよ」

「嘘おっしゃい。年中予定なんかないくせに」

「残念、デ‐トの誘いは断られちまったか。で、聞きたいことなんだが‐‐」




 辺りを見渡しながら、閑散とした通りを目的地へと一直線に向かう。

 昼前だというのに付近は静かで、チラホラと見かける人たちは全員が柄が悪そうであったり、カタギではなさそうであったり、人並みの生活を送れているとは到底思えぬようなみずぼらしい人間であったりと治安の悪さが伺える。

『夜哭街』を抜けたというのに、こちら側にもそういった場所はやはりあるらしい、といってもこの辺りはそういった人間たちが集って飲む酒場通りだというのだからなんら不思議ではないが。

 むしろ、俺のような子供が一人でこの辺りをうろついている方が不思議なようで、すれ違いざまに「ガキが」と露骨に舌打ちされたり、ジロジロと眺めていたかと思えば俺の腰にある刀‐‐『無明』を見て目を逸らしたりと、無手であるならすぐにそこらの道の裏にでも連れ込まれてカツアゲでもされたんだろうなあ、などと想像に容易いぐらいには治安の悪い通りだった。

 そんな通りを歩き、聞いていた目印のある酒場へと入ると、目当ての男はすぐに見つかった。


「だからよお、俺はゲイルの兄貴に言ったんだよ!ゴルド‐の奴なんて恐れるこたあねえってよお!」

「はいはい」


 ゲ‐ス、いや、ゲ‐イだったか。とにかく鷲鼻のクズ野郎の腰巾着の一人だったゲロ口臭男だ。

 男はジョッキを机に叩きつけるように置き、同席の男へとまくし立てるように喋っている。朝だというのにすでに出来上がっているようだ。

 同席の男は適当に聞き流しながらチビチビと酒を煽っている。対面には毒のブレスと酸液を巻き散らす怪物がいるというのに、大した男だ。実はすごい傑物なのかもしれない。

 まあそっちの男には微塵も興味もないのだが。


「よ‐う、兄弟!」


 ズカズカと歩み寄り、ゲロ口臭男の方へと腕をかけ、肩組する。酸っぱい体臭とアルコ‐ルの臭いで今すぐにでもゲロを吐きそうになった。

 だが、せっかくフラウの姉ちゃん達‐‐いや、姉ちゃんは参加してないか‐‐娘達が作ってくれたおいしい朝食を台無しにもしたくなかったし、ゲロ口臭男に振舞ってゲロ男にもしたくなかったので、我慢した。


 我慢できる俺、偉い。


「あん?誰だ、てめえ?」


 ゲロ口臭男がこちらへと顔を振り向け、悪臭に鼻が曲がりそうだった。頼むからこっち向くな、こっち見んな。


「あ?おい!こいつ、フシとか名乗ってたガキじゃねえか!?」


 同席の男が大声を張り上げたおかげでゲロ口臭男がそちらへと振り向く。

 危なかった、あと五秒も毒のブレスを浴びていたら吐いていたところだった。

 majiでgeroする五秒前だった、ありがとう、名も知れぬ男よ。貴方は俺の英雄だ。

 だが残念、俺はフシじゃない、フジだ。フシなのはお前の目だ、節穴め。いや、この場合は耳か。節耳?


「あん?」


 俺の顔を確認しようと、ゲロ口臭男‐‐もういいや、毎回長い。ゲロでいいや。ゲロ男で決定‐‐ゲロ男は再び俺の方へと向く。再び嘔吐カウントダウンが俺の中で始まったので、慌ててゲロ男から離れて名も知れぬ英雄の隣へと腰かける。


「ようよう兄弟!シケたツラしてどうしたよ!」

「てめえ、何しにきやがった!」

「このがきゃあ!」


 ゲロ男も対面に立ってようやく俺の顔にしっくりきたようで、赤ら顔ながらもしっかりと担架を切ってくる。相当恨まれたようだ。俺を恨むのもお門違いだと思うのだが。


「まあまあ、待ちなって。俺も飲みに来ただけで、たまたま兄さんらを見かけただけ。何もドンパチしにきたわけじゃねえ、な、大人しく飲もうぜ!」


 もちろん、嘘だ。アンとキリィにゲ‐スの仲間が『夜哭街』を抜けたか、どこへ行ったかと尋ねた。

 幸い、この男達もアンとキリィに面が割れてるようで、すぐにこの酒場へと向かっただろうと教えてくれた。伊達に長年『夜哭街』の門番をしていない、すごい記憶力だ。


「ふざけんな!てめえなんかと飲めるかよ!」


 英雄男が立ち上がり、懐へと手を伸ばす。ナイフでも仕込んでいるのだろうか。慌てて制止する。


「おおっと、待て待て兄弟!ここは『夜哭街』じゃねえんだ!抜いたら俺も抜かなきゃなんなくなる!なんなら『剣鬼隊』の奴らがやってきて俺ら皆しょっぴかれちまう!それはあんたも望むところじゃないだろ?」


 男達はゲ‐スの仇討ちなどよりも我が身が可愛いはず。だからこそ昨日だってすぐに退いた。

 ここでも自分らがしょっぴかれてでもゲ‐スの仇を討とうなどという気概はないはずだ。


「くっ!」


 英雄男は悔しそうに歯噛みしながらも、しっかりと俺が『無明』へと手を伸ばさないのを見届けてから大人しく席に着く。


「よかった、よかった。悪かったよ、急に声かけてよ。マスタ‐!この二人に同じ酒をもう一杯ずつ!俺には、そうだな、炭酸水をくれ!」

「……あいよ」


 カウンタ‐の奥に佇む無愛想な店主へと声を掛ける。迷惑そうな目を向けられ、邪険に扱われるかと思えば、注文さえすればいいようで、助かる。

 まあ、店内も侘しく廃れた様子なのは見てすぐわかる。数少ない貴重な客を粗末にすることもないだろう。


「けっ、酒の一杯程度で許されると思うなよ、酒も飲めねえがきが」

「まあまあ。俺だってそんだけで許してもらおうなんて思っちゃいねえよ、せめてこの場はゆっくり話そうぜ、兄弟」

「酒も飲めねえのに酒場に来たってのかよ?」

「酒は飲めねえけど、雰囲気は好きなんだよ」

 酒は嫌いだ。

「変ながきだな」

「まあまあ、俺の話はいいじゃん、それより兄弟のボスはどうしてるよ」

「ゲイルの兄貴ならてめえに斬られた手が痛むっつって熱と痛みにうなされてるよ」

「そら大変だ、お大事に」

 どうやら彼らのトップはゲイルというらしい。ゲ‐スにも上司がいたのか……ってわけねえな。俺が手を斬った男、ゲ‐スじゃなくてゲイルって名前だったのね。

「けっ、よく言うぜ」

「そう言ってくれるなよ‐、兄弟。俺だって大変なんだぜ、大事な商売女達を傷つけられて、ゴルド‐の旦那から大目玉。旦那の恐ろしさは兄弟たちだって知ってるだろ?大変だよなあ、お互い。おっかねえボス持つとよう」

 女達はあくまで道具。道具を傷つける者はゴルド‐は許さない。そう印象付けさせる。女達に人質の価値を見出させるな。

「なんだ、やっぱりゴルド‐の奴、おっかねえのか?」

「そらもちろんよ!女に手を出そうもんならただじゃおかねえ!あんなおっかねえボスの下でやってくのも大変!幹部にしてやる‐なんて言われてついてったらろくなもんじゃねえ!そっちはどうなんだい?ゲイルの兄貴の幹部ともなりゃあ好待遇だろ?」

「馬鹿言え、幹部なんてだいそれたもんじゃねえよ、せいぜい小間使いがいいとこってんだ」

「そうそう」

「え‐、じゃあなんで兄弟らはゲイルの兄貴に付いてるんで?」

「そらあ俺らは兄貴の人柄に惹かれてよ、兄貴は魅せる時にはしっかり魅せてくれるんでい」

「そうそう」

「そうかあ、じゃあ二人をウチに引き抜こうってのも無駄かあ。おっと、二人とも酒が切れかかってるね。マスタ‐、酒を追加で頼む!あと適当なつまみも!」

「あ、あん?引き抜きだ?」

「そ。俺んとこ、『夜行』っつってな、ゴルド‐の旦那の組織なのよ。でも人員がまだぜ‐んぜん足りない。旦那から適当な人材見繕ってこいってお給金弾んでもらったはいいものの、あてもないし。

 俺も組織の頭張れるようなガラじゃねえし、なんならゲイルの兄貴達や兄弟達が入って仕切ってくんねえかなあ、なんて。そうさなあ、兄弟達が頭やらねえか?」

「はあ?」

「ゴルド‐の組織?聞いたことねえな?何人いんだよ?」

「それがボスを除いたら俺一人なのよ‐、こんなんじゃ組織なんて名乗れないのよよよ」

「なんでまた組織なんて」

「恥ずかしい話、さすがのボスもかの『剣鬼』アッシュとやりあって無傷とは行かなくてねえ、『剣鬼』アッシュが率いる『剣鬼隊』にも負けず劣らずの兵隊が必要と感じたってわけさあ。ましてや今回のボスの負傷も軽いもんじゃねえ、しばらくは身動きが取れなくなっちまった。おっと、喋りすぎたかな。この話は俺と兄弟だけの秘密ってことに」

「は‐ん、さすがの『鉄塊』のゴルド‐も落ち目かねえ」

「まさかあ、うちのボスがそんなわけねえだろって。『夜哭街』のチンピラがいくら束になったって敵じゃねえやい。っとっとっと、さすがに時間がやべえかな。とにかく、気が変わってウチに来る気になったらいつでも歓迎するぜ、兄弟。これは前祝ってことで、金は置いてくぜ、好きに使ってくんな!」

「おう、じゃあな、坊主」


 机に少なくない額の金子を置き、酒場を後にする。

 英雄男は最後まで興味津々と言った体で、ゲロ男は途中から話に加わらず、黙して話を聞き入っていた。

 英雄男は組織に興味あり、だがゲロ男はそうではない。きっともっと旨味を探していたはず。

 おそらくゲロ男は野心家、ボスであるゲイルの負傷の中、敵対するゴルド‐もまた少なくない負傷としった。そんな男ならどうするだろう。求心力を求めるなら何を為すか。


 情報は価値だ。自分だけが知る情報はとても大きな価値がある。


 ゴルド‐の机から借り受けた金、フラウ達からは必要な分さえ残っていればいいとのことだったが、あれは彼女達が生きるための金、彼女達を守るための金だ。


「彼女達の安全を確保したうえで、しっかりと金を机の引き出しに戻さねえとな。つっても、撒きすぎたか?金も、情報も」


 ゲロ男も英雄もそこそこ酒が入っていた。酔えば思考が鈍くなる。欲望に忠実になる。餌は撒いた。あの二人はその餌にどんな反応を示すのか。

 自らの描いた通りになることを願う。


「さて、その為には次の準備しとかねえとな」


 治安の悪い通りを上機嫌に鼻歌を歌いながら歩く。すれ違う人たちが怪訝な目で俺を見るが、今は粗末な事だった。

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