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公文書を偽造せよ!

 その日は早馬がひっきりなしに出たり入ったりしてました。

 野営をして水煙が立ち込める中、カイさんが聞いてきました。


 「おい、本当に大丈夫なんだろうな。」


 「姐さんは問題無いと言ってましたよ。」


 「全く意味がわからん。まあ、俺達が着ている捕虜から奪った軍服はわかる。砦の奴らを騙すためだろう?」


 「お〜。良く分かりましたね。さすがです。」


 「ま、まあな。これでも昔は神童って言われてたんだぜ。」


 「随分と子供の可能性を過大評価している親だったんですね。」


 「よせやい。褒めるな。で、ボロい服を着させて逃がした捕虜たちは何なんだ?」


 「それは義軍が侵攻しているっていう演出です。捕虜たちは単純に家に帰ろうとしているだけなんですけどね。それによって、籠城するのに物資が必要って説得力を持たせるためです。」


 「ふむ。で、先回りしたのは?」


 「そりゃ守る方も準備が必要でしょう。義軍侵攻に気づいた他の地域の守将が籠城物資手配に使者と護衛を手配する。今頃、アーカス砦の守将は現状の情報収集に早馬を飛ばしてますよ。」


 「それだと嘘がバレちゃうだろ。」


 「大丈夫ですよ。」


 「侵攻はしている。領主には距離的に明日までに間に合わない。印章は間違いなし。」


 「あの印章はどうしたんだよ。本物もってるなんておかしいじゃないか。」


 「姉さんは”何事も目的を遂行するには手段の是非は問題にはならない”と仰ってました。文官にあるまじき行為ですね。

 あの印章は空の命令書と印章を押したものに後から都合のいい内容を書いた本物ですよ。領主の側近に粉薬を効かせて貰ったみたいですよ。

 腐敗した官僚って本当に怖いですね。」



 「…お前もその官僚じゃねえか。」


 「僕は文官ですよ。姐さんもね。今頃、この砦の守将も輸送物資をちょろまかして横流ししようと考えてるんじゃないですかね。姐さんが先の戦いの時に商団にゴニョゴニョ話をしてましたから。さっきもその商団が砦に入って行きましたよ。」



 「するってと何かい。前の戦いの時にはもうこの段取りを組んでたってことかい。」


 「そうなんじゃないですかね。姉さんは”段取り8分仕事2分”ってよく言ったますからね。」




 こうして10ヶ月分の食料と金貨12000枚を手に急いでアートフリークの町に帰りました。

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