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空族館

作者: 筑間 陸

 大学帰りのことだ。


 今日はよく晴れている。日差しが暖かく、いかにも春らしい天気だ。

 目の前の浅い川には、『渡ってください』とばかりに飛石があり、『浸してください』とばかりに透明な水が流れている。私は、その誘いに乗ることにした。

 ジーパンの裾をまくり、靴に脱いだ靴下を入れて手に持つ。準備は万端だ。

 そっと素足をつける。冷たすぎず、丁度いい水温だ。小石のせいで少し足が痛むが、そのままちゃぷちゃぷと進んで行く。飛石に上がると、白く乾いた表面に私の湿った足跡がつく。温かい。

 と、並んでいるものとは少し離れた飛石が目に入る。何となく、そこに寝転んでみたくなる。

 腰と靴とリュックを下ろす。足だけを水に浸して、ゆっくりと仰向けになる。


 空は、一面真っ青だった。


 いや、そうではない。空はいつだって、絵の具の白を混ぜたような色をしていると私は思う。今日はたくさんの青に少しの白を混ぜてべったりと、かつ爽やかに塗ったような色だ。手を伸ばせば触れられそうな気もするし、どこまで行っても届かないような気もする。


 そんな青の画面に、不意に何羽もの鳶が映り込んだ。


 私の好きな猛禽類。彼彼女らは大きな翼を羽ばたかせることなく、ゆっくりと、優雅に、舞うように旋回している。その姿は、空という大きな青い海を飛ぶ魚のようだ。

 烏や燕、鳩なども横切って行く。ここはさながら空族館。私だけの無限の空槽だ。

 私はしばらくの間、口を半開きにし笑みを浮かべて眺めていた。周りの人など見えない。私が見ているのは、空を泳ぐ鳥たちだけだ。


 明日もきっと頑張れる。そう思った。



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