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稀代の魔術師  作者: 神山 備
第三部 チビビク物語
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塞翁が馬

 結局、私は無意識に私の映し身、宮本美久を目指して飛んだ様です。ただ、座標軸を特定ロックオンしていなかったため、彼がいた場所とはかなり離れたシブヤにたどり着いのですが。

 また、座標軸の特定は追跡するにも重要だったらしく、

「此度は、おまえを見つけるのに本当に苦労した。もう見つからぬかと肝を冷やしたぞ。

大体、おまえがどんどんと移動するからだ。道を見失ったらその場におるのが迷子の鉄則であろうが」

と、屋敷に戻ってからお祖父様に懇々と説教されることになりました。

 ただ、飛ぶべき座標軸がはっきりしていれば結構ぶれずに飛べるもので、私はあれからちょこちょことマスミがソウタと結婚して、夫婦二人だけになった『山猫亭』におじゃまさせていただくようになりました。ご両親は、いきなりニホン語が話せるようになった私に当惑しながらも、

「息子ができたみたいだ」

と私をかわいがってくれました。

 そうそう、マスミは、本人が危惧するよりもあっさりと、ソウタのご両親に受け入れられた様です。

「爽太みたいな、甘ったれはね、真澄さんくらい年上でしっかりした人の方が絶対にいいのよ」

と、ソウタのお母様やお姉様のコトコなどの女性陣は逆に諸手を挙げての賛成で、身構えていた二人は正直脱力したようです。

 また、チエはマスミたちの結婚式でソウタの兄、ソウヘイに一目惚れ、自分から押しまくって見事彼らの兄嫁となりました。まさに、『情けは人の為ならず』です。

 その後、ソウタのお祖母様がが亡くなり、ソウタのお母様は晴れてご正室になられ、ソウタたちもお父様と同じ結城姓を名乗ることとなりました。

「常務がちゃんといるんだから、それで何が変わるって訳じゃないんだけど」

今までの母さんの気持ちを考えるとな、とソウタは言っていました。

 ですが、そのたった二年後、不慮の事故でその常務であるお義兄様があっけなく亡くなられると分かっていれば、ソウタは受けなかったかもしれません。

 結局、それために起こった『お家騒動』も、恨みなくマスミと二人、遺されたお義姉様とまだ小さかったお子様を支え、無事乗り切り、よりいっそうの結束を固めたようです。


 何事も『塞翁が馬』私も、このときの事あったからこそ殿下のお命を守ることもできましたし……


「かわいいかわいいじゃじゃ馬姫も、嫁にできたしな」

私の話にデニスがニヤニヤ笑ってそう言いました。

「ホントにセルディオはネタの宝庫だ。ネタに詰まったらここに茶を飲みにくるに限る」

「茶を飲みにくるに限るってここ、一応執務室なんですが。

あっ、それにそれは、私が大切にとってあったニホン酒! まったく、隠してあったのにどうやって見つけたんですか。最近は忙しくてニホンには滅多に行けないんですからね。

私にもちょっと残しておいてください。

……ちょっと、放っておいたら全部飲んでしまわれるでしょ。ええい、私も一緒に頂きます」

私はデニスから一升瓶を強引に取り上げると、紅茶を飲んでいたマグカップになみなみと注ぎ入れて、中庭のガザの木を見ながら男二人の宴会を始めたのでした。


                    -The End-


ちょっとした小ネタのつもりで書き出した、「チビビク物語」やっとエンドマークです。3話のつもりがなんと5倍の15話もかかっちゃいました。


ビクトールの二ホンの諺っていつもどっかおかしいんですけど、今回はまとも。いやね、崩しようがなかっただけなんですけどね。


文中には何も出てきませんが、ビクトール(美久も)かなり呑兵衛です。

サントノワレのシュークリームをつまみに、大吟醸を飲むのがhisブーム。

だけど、一国の王になってしまった今、中々それができないのが悩みの種だったりします。

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