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稀代の魔術師  作者: 神山 備
第三部 チビビク物語
36/43

あーあ、地雷踏んじゃった 1

【日本ではこれくらいまで一人でいるのは普通なんだからね】

千絵がため息まじりで言い訳がましくそう言うと、

「あんたたち何を真剣に話し込んでんだい?」

この子の家の手がかりでもあったのかいと、母さんが言う。それで、

「この子のあこがれのお姉さんがお嫁に行くって話で。でも、そのお姉さんが17歳なんだってんだから驚き。さすが外国(ホントは異世界だけどね)日本じゃ考えられないよねって」

と、千絵が説明する。あーあ、ダメだよ、千絵。それって我が家では今の、地雷ワードの一つなんだからさっ。案の定、

「へぇ、17でお嫁入りねぇ。それじゃぁ、それのほぼ倍のあんたはいったいいつになったら嫁に行くんだろうね」

と、そう言って母さんの眼が怪しく光る。けど、倍だったら34でしょ。そんなアバウトに計算しないでほしいわ。後4年もあるじゃないのさ!

「そりゃさ、結婚が女の幸せだなんて言わないよ。けどさ、一回くらいしといて損はないと思うんだけどね」

孫の顔も見ないで死んで行くのかと思うと、涙がちょちょぎれるよ、と母さんは続ける。これが始まると長いんだから。やれ、30歳の時には私はもう生まれていて何歳だったの、訳も分からず厨房に入り込んで私が火傷した話だのと、延々と続くんだからね。

 でも、今日はそんな愚痴話は一瞬で終わった。何故って母さんのお小言を聞いて千絵が、

「真澄、おばさんも心配してんだし、爽太の話、受けちゃいなよ。おばさん真澄ね、彼氏からプロポーズされてんのに渋ってんのよ。ソン様だけを楽しみに生きてる私からしたら贅沢だっつーの」

なんて爆弾発言を吐いちゃったからだ。 

「ち、千絵~! 何て事言うのよ!!」

大体、爽太は会社の後輩で彼氏じゃないし。プロポーズされたのは、まぁ……ホントだけど。

「真澄、そんな人がホントにいるのかい?」

母さんは妙に優しい口調でそう言った。それはまるで、ターゲットをロックオンした猛獣のようだ。

「い、いや彼氏じゃなくて会社の後輩で……」

私はしどろもどろにそう答える。

「でも、顔見る度に口説かれてたのは事実でしょうが」

「あれは新プロジェクト参画のお誘いでしょ、紛らわしいこと言わないでよ」

「それにしてもすごく熱心だったよね、『真澄先輩は絶対にウチにきてね』って」

ホントに何なのよ、ああ言えばこう言う。

「うるさいわね、私はね、6歳年下のお子ちゃまなんて対象外……」

おもわずそう口走ってから、トールを見て私は口ごもる。おそらく日本語だから彼は解らないだろうけど、こんな不毛な言い合いが続けば、きっと何を話しているか聞いてくるだろう。そして、今の会話を千絵が伝えれば、彼を余計に傷つけそうな気がする。ま、大好きなお姉さんじゃなきゃそうでもないか。

「へぇ、6歳年下って事は24かい。で?」

母さんは私をかっ飛ばして、千絵に爽太の事を聞いた。

「ご紹介申し上げます。阪井爽太様、H大経済学部卒の24歳。この間まで、真澄の下で働いていましたが、この度めでたく新規部署のリーダーとして抜擢され、今や係長。年下って事を気にしなきゃ、思いっきりの優良物件でございますよ」

そして千絵は、それに対してなんだがお見合い好きのやり手ばばあのような口調でとくとくと爽太の説明をする。しかし、今日に限ってどうしてこんなにしつこく爽太のことをアピールするかな。


 そう、爽太は世間的に見ればかなりの優良物件だろう。有名国立大学を卒業し、顔もそこそこイケメンで、何よりウチみたいな大手で、それがまったく新しいプロジェクトだったとしても、たった2年で係長なんて普通あり得ない。私も教育係として鼻が高かったし、そのプロジェクトに私を誘ってくれたことも本当に嬉しかった。

 

 だけど、私は聞いてしまったのだ。


なんか延々終わらなくなってきたので、一旦ここで切ります。

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