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稀代の魔術師  作者: 神山 備
第一部 元の世界へ
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あの男……

「殿下、此度は私の配慮が足りず、殿下を大変危険な目に遭わせてしまいました。トレントの森などという人気のない道など通らなければ、もっと策もありましたものを。本当に申し訳ございません」

 界渡りの荒技が一段落して、王や重臣たちが離れた後、ビクトールはそう言ってコータルに頭を下げた。

「謝らずとも良い。どの道刺客はどこを通ろうが襲ってきただろう。もし同じ深手を負ったとして、スルタン、お前以上の事後の手当ができたものはいないはずだ。

それに、あの異世界の者としての旅、なかなか楽しかったぞ。寧ろ感謝している」

それに対して、コータルはそういって晴れやかに笑った。

「もったいないお言葉です、殿下」

「しかし、あの男……私の映し身と言うが、どうにかならぬものかな」

「鮎川様ですか? 彼がどうかされましたか」

どうにかならないかと聞きながら何やら愉快そうな様子のコータルを見て、ビクトールは不思議そうにそう聞いた。

「私と入れ替わった後、フローリアに無理矢理接吻をして拳を打ちつけられておった」

「ああ、やっぱり」

そうなると思ってましたと、ビクトールが相槌を打つ。男たちがくすくすと軽い笑い声を挙げる中、

「まぁ、私は殿下に手など上げたり致しませんわ」

フローリアが不満の声を挙げた。

「そなたのことを言ってるのではない。どうもあちらのフローリアはあやつに合わせてずいぶんと跳ねっ返りのようだしな」

「みたいですね。でも、彼女はフローリア様ではなく、カオル様と言うのではなかったですか」

「フローリアはミドルネームだそうだ。

だが、あやつは殴られてニヤニヤと相好を崩しておった。まぁ、同じ顔をした私に彼女を取られたかと必死だったのだろうな」


その後、

「それがあの男を目覚めさせるための策だと知って、完全に骨抜きになっておった。まったく、同じ顔であのような見苦しい様を見せられると、なんだか複雑な気分だ」

「ふふふ、鮎川様は尻に敷かれそうですね」

コータルとビクトールが頷きながらそう話している横で、

「私はコータル様を尻に敷いたり致しません!!」

と一人フローリアがプリプリと怒り散らしていたことは言うまでもないが、それを横で見ていたエリーサが密かに、『お姉ちゃまも絶対にそうなるわね』思っていたことはフローリア本人には決して告げることのできない話である。






 





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