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閑話 王子と神官長

本編途中ですが、爽香の一人称では書ききれない面のことを閑話として時々挟んで行きたいと思います。(こちらは三人称で進みます)

バーナビー・ルーン、28歳。職業エフェノリア国・エレミア教神殿神官長。独身。


彼は常にないことに非常に動揺していた。


元を返せばエレミア教総本山であるターゼンの大主教からのお達しで降臨された「神」とやらを探すことになったのが発端である。


現エフェノリア国の国王陛下はのんびりとした気質で、自国の領土をこれ以上増やしたいとか世界を手中に収めたいなどという野望とは程遠い人物である。


だが、大主教のお達しにより各国が血眼になって「神」を探している現在の状況でエフェノリア国だけ知らん振りをしているわけにはいかなかった。


エフェノリアが領土拡大を求めていなくても他国が求めていないとは限らないのだ。

表向き四大国は安全保障同盟を組んでいるが、水面下ではきな臭い動きが頻発しているという情報も入ってきている。


仕方なく国王はエフェノリアに伝わる秘儀により、異世界よりの召喚者「伝説の人」(レジェンド)を呼び出しこの窮地を救ってもらえるように頼むことにしたのだ。


結果呼び出されたのは16歳の少女、「篁 爽香」。


突然異世界に呼び出されたというのにパニックになることもなく落ち着いて冷静に行動が出来る謎の少女。


見た目は背の半ばまである漆黒の髪に夜の闇を映したような深い黒。

薄いアイボリーの肌と大きな瞳は全てを見透かすような不思議な透明感があり、紅を乗せたわけでもないのに赤い唇が実際の年齢より大人びた印象を与えている。


……つまり、誰が見ても美少女である。


話す言葉も丁寧で、女官たちに対しても驕った様子は全く見当たらない。


そんな彼女が異世界風の挨拶とともに微笑んだ瞬間、バーナビーを含めてその場にいた全員が一瞬にして魅了されたのだ。


この世界では神官は異性禁止という項目もないし、実際妻帯者や家族持ちの神官も多い。故にバーナビーもそれなりに恋愛経験はあった。


それでも本気の恋はしたこともないし、することもないと思っていた。

今まで付き合った女性といえば家柄やその特権を意識した物たちが圧倒的だったし、バーナビー自身もひと時のもの、と割り切っていたから別れる時も後腐れなかった。


それなのに一回りも下の少女に見惚れるなどありえない。

そう一番思いこみたかったのはバーナビー本人であっただろう。




「………はぁ」


「どうしました、アレク?」


「いや、……その、なんだ。サヤなんだが…」


国王へ謁見するために廊下を歩いていたアレックスとバーナビーだったが、ため息を漏らすのを聞いて声をかける。


「アイツ、あんな風に笑えたのか?!オレには冷めた態度しか取らなかったのに。…心臓が止まるかと思ったぞ」


興奮なのか驚きなのかわからないがアレックスの顔は真っ赤である。


「貴方に対して冷めた態度をとっていたのは仕方がないでしょう。第一印象が悪すぎます。そもそも、何の説明もなしに要求を突きつけるとは外交手段として最悪ですね。これが実際の外交であれば戦を引き起こしたとしても文句は言えないでしょう」


「バーニー、おまえ冷たすぎるぞ…。自分だけサヤに気に入られやがって……」


「なんとでもおっしゃい。私は初対面の相手に対して正当な礼を取ったまでです。それになんですか、子供のように拗ねるなど「王子」としてふさわしい態度ではありませんよ」


バーナビーの言葉にアレックスが「これだから容赦も遠慮もない乳兄弟はなぁ…」とブチブチと文句を言っている。


アレックスの言葉通り、バーナビーとアレックスは乳兄弟である。

バーナビーの母が王妃付きの筆頭女官長であり、王子・王女たちは皆バーナビーの母を乳母として育っている。


バーナビーはアレックスより6歳上だが、待望の第一王位継承者が生まれたときからその傍において王子を支える側近として仕えるように決まっていた。

だが、本人は王子側近として支えるのではなく、国のもう一つの柱でもある神殿に入り、そちら側からアレックスを支えようと決めていた。


だからアレックスが物心つく前からスパルタ的に「第一王位継承者」としての心構えを叩き込み、アレックスと一つ違いの自分の弟を王宮側の側近として育て上げた。


ちなみに、「アレク」「バーニー」は身内でしか使わない愛称なのでアレックスが他人のいる前でその名を呼ぼうものなら後ほどイヤというほど説教を受ける羽目になるというのはまた別のお話。


「まぁ、兎に角。貴方はサヤ殿になんとか役目を引き受けていただけるように説得をしてください。……彼女が引き受けてくれないことにはわが国の将来は暗いものになりますからね」


「う………わかった。なんとかやってみる」


「私は引き続き降臨された「神」とやらの情報を探ってみます。探すにしても特徴も何もわからないままでは探しようがありませんからね」


そんなことを話して居る間に国王の執務室までたどり着けば、扉の左右を守る護衛が王子と神官長を見て敬礼すると扉を開ける。


さて、陛下にどんな説明をしたものか。

そう思うことでバーナビーは爽香に対して感じた一瞬の思いを忘れることにしたのであった。

爽香、ようやく美少女と表現してあげられました(笑)

アレクとバーニーの関係はチャンスを見てまた書いて行きたいと思います。

二人がもいつ自覚するのか楽しみです(酷)

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