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雲の上の世界は甘くない?


てっきり地上につながっているんだと思っていた扉の向こうに広がっていたのは普通、飛行機にでも乗らないとお目にかかれないようなきれいな雲海でした。


その美しさに一瞬足を止めて見惚れてしまったものの、背後からは王子様(?)らしき人の声が追ってくる。

このままここでボケーっとしてたら追いつかれるのは目に見えているのでさっさと逃げなければいけないのだが、どうにもこうにも行き止まりで先が無い。


扉から顔を出して下を覗けば雲をすかして遙か彼方に小さく建物が見える。



………えーと、実はここの雲は足場がしっかりしてて歩けるんですー♪とかいうようなファンタジーなオチだとうれしいけど、違ってたりしたら地上(?)まで真っ逆さまですか。

この高さで落ちたら間違いなく叩きつかって残念な感じになって即死だね♪


などと思わず脳内にその姿を想像しそうになって大慌てでかき消したのはしょうがないよね。(ちなみに脳内映像にモザイクがかかっていたのは言うまでもない)


と、とりあえず何かを雲の上に落として足場があるかどうか考えよう!


そう思ってゴソゴソバッグの中を探したところ、お昼の時に友人から貰った100%のオレンジジュースの缶が出てきた。


ちょうどいいのでそのジュースに先ほど秋葉で仕入れたコイルを巻きつけ1Mほど線を延ばす。


これで万が一落とした缶が雲をすり抜けたとしても下までは落ちないだろう。


かなりの高さのあるこの場所から中身入りの缶ジュースを落として、万が一地上にいる人に当たったりしたらそれこそヤバすぎる!

若い身空で殺人者になんてなりたくないですからねっ!



そんな訳でササッと作った錘を雲の上にぽんと放り投げると。

見事に貫通してくれました(涙)



あー…やっぱりそううまい話はないかー。


がっかりしながら銅線を手繰り寄せてジュースをバッグにしまったところで背後にぜーはーぜーはー息切れした人が到着したようだった。



「ま、まて、と、いったの、に、(ぜーはーぜーはー)ひとの、はなし、も、き…け…」

バタリ。



あ、王子様(?)が酸欠起こして倒れた。

うーん、更にお付の人はもう少し下のほうを上ってきてるみたいだし、今のうちに見捨てて一つ前の踊り場から横道に逃げちゃおうかなー。



などとチラリと非道な思いもよぎったのだが、流石にちょっとかわいそうに思えてきた。


実は、この場所って最初に居た洞窟から見るとそこそこの距離昇ったところなんだよね。

わかりやすく言えば東京○ワーの大展望台まで昇ったぐらいかな?

あっちは子供でも15分ぐらいで昇りきれるらしいけど、ここは高度のせいかちょっと酸素が薄いような気がしなくもない。

まぁ、私は二の兄(こーちゃん)の趣味に付き合ってトレッキングとかもやるから多少の高度差は全く問題ないんだけどね。


洞窟内で最初に会った金髪のコスプレイヤーさんたちはどうみてもインドア派というか、あまり体を鍛えてなさそうだったから、私を追いかけて急いで昇ってくるのは相当辛いだろう。


でも、この王子様(?)って着てる服からすると軍服系?つまり体も多少鍛えてあるはずなんだけど何でへばってるんだろう?

こんなことでへばってるようじゃ戦えないぞーとか思いつつ、倒れた王子様(?)のほっぺたをつんつんとつついてみる。



つつかれた方はなにやらうーんうーんと暫く唸っていたが、いきなり目を開けるとがばっと体を起こして私の手をしっかりと握り締めた。


「やっと捕まえたぞ!「伝説の人」(レジェンド)!」


「………………」


上半身を起こした王子様(?)の顔が丁度私の目の前に高さにあるので思わずマジマジと見てしまうが、うん、見た目だけならほんっとーーーーに、美人だ。この人。



さらさらの銀の髪は天使の輪が出来そうなつやつやキューティクル。その髪は背の半ばまであるだろうか?首の後ろで細いひもで括って一本に束ねている。

切れ長の瞳は紫水晶。あー、やっぱり睫も銀色なのか。日本じゃ見られない組み合わせだから本当に珍しい。

目鼻立ちもスッキリしているけど、決して甘いだけじゃない雰囲気がある。多分、事務方も行動力もそれなりにありそうだ。



ただ、一つ言わせて貰えば。






この人、「ヘタレ」のニオイがする。




以前、お父さんの友人(日系アメリカ人)に会ったことがあるのだが、その人も凄くハンサムでかなりモテモテだったのに幼馴染の女の子に片思いして二十うん年言い出せないまま幼馴染の尻に敷かれまくっていたという話を聞かされたことがあるのだ。(それも本人から)


まぁ、結果的にそのお友達は初恋を実らせて幼馴染の彼女と無事ゴールインできたのだが未だに奥さんの尻に敷かれているそうだ。



この王子様(?)からはそのお友達とよく似た空気を感じるのだ。

つまり、異性にはかなり押しが弱くて、気がつくと流されやすい。という雰囲気だ。



「…「伝説の人」(レジェンド)?」


「……そんな怪しいものになった覚えはないと申し上げたはずですが?そもそも、人を一方的に呼び出しておきながら、一切の説明もされないままそちらの都合を押し付けるというのは一国の指導者としては如何なものなのでしょうか?」


にっこり笑顔で私はさりげなく言うが、当然目は全く笑っていない。

一歩間違えれば慇懃無礼と聞こえなくも無い口調に込めたのは


「勝手に呼びつけておいて説明の一つもなしとはどういう了見なのかな?ふざけないで欲しいなっ(怒)」


という脅しに他ならなかったりする。


私の言葉になにやら顔色を変えた王子様はちょっと後ずさるとなぜか正座をしてしまった。


「そ、それは…確かにこちらが無礼だった。申し訳ない。だが、こちらにも事情があったわけで」


「まぁ、そうですわね。自らの身分も明かさずになにやら重大そうな役目を押し付けようとなさるぐらいですから」



ホホホとちょっと口元を手で隠しながら睨むとさらに縮こまった気がする…のは気のせいじゃないだろう。



「私はアレックス・ジリ・エフェノール。このエフェノリア国第一王位継承者だ。「伝説の人」(レジェンド)よ、名前を教えてはもらえないだろうか?」


篁 爽香(たかむらさやか)。高校一年です」


「タカ…ム、ラサ…ヤカ?」


「変なところで切らないで下さい。呼びにくければサヤで結構ですので」


「そ、そうか。ではサヤ、改めて頼みたい。わが国を救う勇者になるか、わが国を守る巫女姫となるか、どちらかを選んで欲しい」


「どちらもお断りいたします」




相変わらず即答で答えた私に対してアレックス王子が絶句した。

アレックス王子撃沈(笑) というか相変わらず説明ナシなんですね、この人。

流石王子様、物事の頼み方を知らないようです(苦笑)

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