怪しいコスプレ集団は揉め事のニオイ
「………」
「…………」
目の前にいるコスプレイヤーさんは薄い金の髪に青い瞳に白い肌。北欧系なのかな?あまり日焼けしなさそうな肌をしている。
身に着けているものは白地に金糸銀糸の縫い取りがしてあるけど余り派手な印象は無い。どちらかというとかなり地味な感じだ。
ローブといった感じの足元まである長衣の腰辺りを薄紫の幅広布で巻いて体型に合わせているらしい。
こんな服装が出てくる話なんてあったかなぁ…?
とぼんやり考えていたら右手の方から足音が聞こえた。
ん?足音?というか、ここどこ?省吾さんは?
はっと我に返って周囲を見渡せば周囲はどう見ても秋葉原の町並みではない。
それどころか、どうみても自然石で作られた洞窟の中である。
洞窟の中にもかかわらず、空気は清浄で籠もった感じや嫌なガスは全く感じられない。
また自分の背後に光源があるのかぼんやりと周囲の様子を見て取れる程度には明るい。
そして目の前には何故か私に向かって跪いた金髪コスプレイヤー's。
私は立ち上がると自分の服装や持ち物をまず確認する。
とても、とてもいや~な予感がするのでまず自分の持ち物を確認したかったのだ。
着ているのは朝家を出たときと変わらない学校の制服(セーラー服)。持ち物は肩からもかけられるリセバッグとさっき買ったラジオ部品やお弁当箱などが入った小ぶりのスポーツバッグ。
こっそり確認したポケットの中には朝三の兄からもらった小さな指輪も間違いなく入っている。
となると足りないのはただ一つ。省吾さんだけだ。
カツン、カツン、カツ…
足音がすぐ近くで止まる。
私はなるべく表情を殺して無表情を装いながら足音の主を見る。
『わー、お約束のような美形登場ですよー』
内心で棒読みのまま感心した声を上げてしまうがまぁ、仕方ない。
目の前に立っていたのはそれこそどこのファンタジーに出てくるような王子様ですか?と訊きたくなるような典型的美青年だったのだ。
「この国を救う勇者となるか、この国を守る巫女姫となるか、好きなほうを選べ」
「謹んでどちらもお断りさせていただきます。では失礼」
銀髪に紫の瞳とか言う日本ではありえない組み合わせのうえ、黒の軍服っぽいデザインを着た美形の第一声に私は打てば響くような速度でお答えさせていただいた。
嫌な予感が的中している気がひしひしとするが、私にはやることがある。
省吾さんと早く合流してさっさとこんな怪しいコスプレ集団とおさらばするのだ。
そう考えてくるりと身を返すと既に見つけてあった上へ続く階段を上り始める。
「や…!ちょ、ま!それはないだろう!選ばれし「伝説の人」よ!」
うっわ、なにそのネーミングセンスの欠片もないような呼び方。
生まれてこの方そんな怪しい存在になったことはないのであしからず。
内心で毒づきながら階段を上っていると途中の踊り場にどこから出てきたのかワラワラと軽装の胸当てなどをつけた人々が出てきた。
「お待ちください、「伝説の人」よ!我が王…ゲフッ」
なんかいいかけた人がいたけどとりあえず当身一発で落としてみた。
伊達に合気道やら空手やら剣道やらテコンドーやらの格闘技を10年以上習ってるわけじゃありません。
やたらと過保護で私の身の回りに異常なほど気を使う家族が万が一のために習得させた各種格闘技(一部母親仕込)がこんなときに役に立つとは。皆ありがとう。
背後からはひしひしと面倒ごとを抱えてます。っていう雰囲気の王様だか王子様だかがお供を連れて追いかけてくるけど、家族の教えに従って面倒ごとはスルーします。
邪魔者は丁重にどいていただいて私は地上につながるであろう大きな扉を押し開けた。
そこで私が見たものは。
「なんですか、これは………?」
一面に広がる真っ白な「雲海」でした。
ようやく序章につながりました。
次からがいよいよ本番です。