それが決めゼリフ?
すみません、今回もちょっと短いです。
魔物との戦いから一夜明けて。
朝の白い光が寝不足の目にしみた。
最も、それはこの場にいる全員に一致して言えることなんだけどね。
なんせ、カーティスとクレイグは一晩中剣を振るって魔物を薙ぎ倒していたし、バーニーはそれでもすり抜けてくる魔物を結界間際で食い止めるためずっと攻撃魔法を使っていた。
シーラとギル君は結界の維持と上空からの奇襲に対する警戒、ヴァレリアは結界内に残った私達の最終ラインだから気を張り詰めていた。
そして私は勝手に寝場所から一人で抜け出して単独行動を取っていたことを光源と敵避けのために燃やしていた火のそばでメリッサにこってり絞られるハメになったのだった。
朝の光に押されるように魔物の姿が消えてゆき、完全にいなくなってから外で戦っていたカーティスとクレイグが戻ってくる。
隠し切れない疲労が顔に浮かんでいるのでまずは糖分をたっぷり入れた温かいお茶を淹れて配る。
「あれー?バーニー様とアレク様はいっしょじゃなかったんですかー?」
「ああ、お二人なら念のために一周してから戻ってくるってよ。俺たちは先に戻って治療してもらえって・・・いててて、メリッサもうちょい優しくしてくれよー」
シーラの問いに答えたクレイグだったが後半はメリッサに消毒薬を思いっきり塗られて滲みたらしい。
ちなみにカーティスの治療はヴァレリアがしているので私はお茶当番中。
二人とも魔物と戦うのは初めてだっただろうに思ったよりは怪我がひどくなくて安心した。さすが近衛隊の精鋭というべきなんだろうな、これは。
でもやっぱりそれ以上に気になるのはアレクのことだった。
夕べ現れたヘンタイはアレクとどういう関係なんだろう?
まず考えられることとしては
1.たまたまアレクのそっくりさんだった。
2.アレクが双子だった。
3.アレクは二重人格だった。
4.神に憑かれているor乗っ取られている。
5.私の思考を読み取って化けた。
このあたりかなぁ。
神様なら5番あたり簡単にできそうだけど、そうだとするとなんでアレクの姿で出てきたんだろう?
セオリーどおりなら私の一番好きな人とか気にかかってる人の姿になって出てくると思うんだけど。
もしそうなら出てくる姿は省吾さんじゃないとおかしいしなぁ…
ぐるぐる考えながらお代わり分のお湯を沸かしているとようやくバーニーとアレクが戻ってきた。
みんなが口々にお疲れ様ですーとか他に以上はありませんでしたか?とか声をかけている中、アレクがまっすぐ私のほうにやってきた。
「あ、アレク。あの、お疲れ様でした。その、夕べは勝手にいなくなってごめんな…」
パンッ
………右頬が熱い。
謝罪の言葉の途中でアレクに叩かれたのだと気づいたのは暫くしてからだった。
昨夜メリッサから聞いたところによると私が寝床にいないのに真っ先に気づいたのもアレクでその直後に襲撃があったものだからアレクは相当心配していたらしい。
バーニーとカーティスに野営地の維持を命じるとみんなが止めるのを振り切って私を探しに魔物のいる森に飛び込んでいったとのことだ。
アレクが戻ってきたら真っ先に謝りなさいとメリッサを筆頭に全員に口をすっぱくして言われてしまった。
もちろん話を聞けば聞くほど私の勝手な行動がみんなに心配させたことを実感するしかなかった。
だからアレクが戻ってきたらすぐに謝ることに異はなかった。
けど、まさか叩かれるとは予想外だった…。
「どこに行ってたんだ…!どれだけ探しても見つからなかったから心配したんだぞ!」
え?見つからなかった?
でも、夕べ三の兄と話してる時にアレクがやってきて…
だけど、アレクは私と会ってないという。
と、言うことは。
やっぱり神≠アレクってこと??
「ごめんなさい……どうしても一人になりたかったから……」
それでも怒ってるアレクを真正面から見られずにうつむくと急にぎゅっと抱きしめられた。
「本当に、心配したんだぞ……。何かあってからじゃ困るんだからな」
いきなりのことに私も慌てて抱きしめられた腕の中で顔を上げると、アレクは私の耳にささやくように言葉を続けた。
「トイレに行くんだったらそう言ってから行け。俺が近くで護衛してやるから」
それを聞いた瞬間私の鉄拳がアレクの鳩尾にクリーンヒットしたのは言うまでもない。
「デリカシーのない人って、さいっっっってい!!!!!!」
アレクが倒れ、絶叫した私みんながどよめくが、アレクの一言を伝えると誰も同情しなかったのは仕方がないことだと思うのよね。
せっかくいいシーンになるかと思いきややはりアレクはアレクだったようです(苦笑)
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2012.6.25 誤字修正