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こわいとおもうこと

遅くなってすみませんでした>< ようやく続きアップです。


あまりに異常な死体に誰も言葉がなかった。


男をつかんでいたクレイグの腕から力が抜けたのかずるりと倒れた男には血溜まりすら見当たらない。

でも確かに私たちは見た、と思う。

男の腹から生えた白い腕を。


「バ、バーニー様?い、今のはいったい…?」


真っ青な顔をしたギルが顔色ひとつ変えていないように見えるバーニーに声をかける。


「…クレイグ、その男をひっくり返すのを手伝ってください。アレク様も手伝ってください」


「あ、ああ。わかった」


男三人で死体をひっくり返している間にカーティスとギルが私を含めた女性陣を道を少し戻ったところにあった空き地にまで連れて行ってくれた。


「…ヴァレリア、大丈夫?」


「え、ええ。…大丈夫、死体を見たのは初めてではないし。ただ、あんなのは初めてだったのでつい動揺しただけ。それよりもサヤのほうは大丈夫なの?顔色が真っ青よ?」


「うん…ごめん、ちょっと休んでいい?さすがにいろいろときつい…」


ヴァレリアに指摘されたとおり、自分でも血の気が引いていたのはわかっていた。

ひとつはもちろん先ほどの男の死体。

幸か不幸か16年生きてきて私は身近な人の死に立ち会ったことはなかった。

祖父母は父方、母方ともに元気に存命しているし、曽祖父や曾祖母も田舎で矍鑠(かくしゃく)としているのでまだお葬式に参加したことすらなかった。


だから人の死体というのを見たのは生まれて初めて。

ドラマや映画の中ではいくつも見た『動かない人間(もの)』がこれほどの恐怖を覚えるものだとは思わなかった。

それでも私が卒倒しなかったのはある意味現実感がなさ過ぎたせいなのかもしれない。

まるでホラー漫画か映画のように作り物っぽい腕が生えてその痕跡すら残さずに消えるなんて、そんなのあるわけがない。

そう思い込みたかった。


「サヤ、これ飲んで。少しは温まると思うわ」


声をかけられて顔を上げるとやはり同じように青い顔をしたメリッサが木でできたカップを持ってきてくれていた。

カップから立ち上る香りはすっきりとしたハーブの香りと甘い蜜の匂い。


「ありがとう、メリッサ。……うん、おいしい…」


季節は初夏に向かいつつある時期だからホットの飲み物など普通なら熱くて飲む気にもならないだろうけど、さすがに今ばかりは誰も何も言わずに温かい飲み物で芯から冷えてしまった気持ちを暖めていたようだ。



まもなくバーニーとアレク、クレイグも空き地に戻ってきたけどやっぱりみんなの顔色も悪かった。

メリッサとシーラが熱いハーブティーを渡すと、三人ともその場に座り込んで大きなため息をついた。


「いやー、参りました。原因も手がかりもなーんもなし!とりあえず先に気絶させた他のやつらは改めてバーニー様の魔法で縛りなおして道の端にまとめて転がしておいたので次の街で役所に届ければ適当に処分してくれると思います。ただ、あの男だけは説明を求められても困るので俺たちで処理しました」


おどけたように明るく言うクレイグだったがその内容ゆえか場を和ませることはうまくいかなかったみたいだ。


「さっき件に関しては皆、他言無用で頼む。もう少し休んだら出発する。ゆっくり休ませてやりたいが、逆にここは危険だと思うから一気に次の街まで移動して宿を取ろうと思う」


アレクの指示に全員が頷き、火のそばにいたメリッサとシーラが火の始末を始めた。


「サヤ」


アレクの声に振り返るといつの間にか近づいていたアレクが私の隣に座った。


「すまない。危険な目にあわせるつもりはなかったのだが…」


「別にアレクのせいじゃないでしょ?最初にあいつらの気配に気づいたのはアレクだったし。…それに多分、旅を続けていれば同じようなことがまたあるだろうし…。戦いになって誰かが傷ついたり、その結果誰かが犠牲になることだってありえないわけじゃない」


「だが、お前はオレが守る。約束する」


「……それは、うれしいけど、私は仲間の誰も失いたくない。だから自分と他のみんなも守るって言うべきだと思うよ」


「………わかった。誰一人かけることなく「神」を見つけ出した後はエフェノリアに帰ろう」


なんとなくアレクが凹んだ気がしたけど、私としてはみんなが無事に国に帰れることのほうが大事だ。

もちろん、私と省吾さんが一緒に元の世界に帰ることも含めて。



「さぁ、みなさん日が暮れる前に街に着きたいので出発しましょう」


バーニーの声に各自自分の馬に乗ると一気に森の中の道を駆け抜けた。




急いで森を抜けたおかげで日が暮れるまでにはだいぶ余裕を持って次の街に着くことができた。

今日の宿はさっきの襲撃を警戒していつもより少しランクの高いところを選んだみたいだった。

宿代=警備の充実度というのがこの世界の基本的な仕組みだというのは城を出る前に教えてもらっていたから今日の宿を見たとき思わず感心した声が出てしまった。



「うわー、今日はだいぶ奮発したんだねー」


「先ほどの一件がありますからね。バーニー様が今日だけは、とおっしゃってましたよ」


ヴァレリアが苦笑しながら言ったとおりこのパーティーのお財布はバーニーが握っている。

もちろん、先行して宿の目星をつけてくるのはクレイグかカーティスなのだが実際に宿代を交渉してしっかりまけさせている姿は何度も目にしていた。

というか、その倹約精神は私にもおなじみのものなので実はひそかに交渉時には後ろから応援していたりする。


そんなバーニーが交渉すらしないで決めたぐらいなので今日の宿は警備体制はばっちりだし、お風呂もご飯もとても豪華で、みんな昼間にあった一件をとりあえず忘れるぐらい安心してくつろいだのだった。


活動報告にも書きましたがおまけ小話集を新しく作りました。まずはお気に入り登録者数100名突破記念&バレンタインの小話です。

爽香のお兄ちゃん'sも出てきます。

よろしければそちらもお楽しみください。

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