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いざ!出発の時

そして気が付いたらあっという間に「神」捜索隊の出発日が来てしまった。


とりあえず、何故かこの旅に参加しているアレックス王子とバーナビー神官長はお忍びという形で参加がなので、偽名を名乗ることになった。


「旅の間はただのアレクということで頼む。そうだな…身分はカーティスと同じ近衛隊第2小隊の隊員だ」


「では私はバルナバで……」


「え?バーニーじゃないんですか?」


バーナビー神官長が申請した偽名を私は即座に却下する。

バルナバなんて格好いい名前は許しませんのことよ?


ふふふ。と意味深に笑う私に神官長が苦虫をかんだような表情になる。


「いいんじゃないか?もともとバーニーは愛称なんだし、オレもその方が呼びやすい」


「わたしもですー!またバーニーお兄様って呼んでもいいですかっ!」


思ったとおりアレックス王子とシーラさんが援護射撃をしてくれる。

困ったような苦々しげな微妙な表情をする神官長を見るとここ一月の間にたまったストレスが解消される気がするのは何故だろうか。


「………仕方ありませんね。アレク(殿下)にヘタにぼろを出されるよりはマシでしょう。そしてシーラ、お兄様はやめなさい。いいですね?」


シーラさんはお兄様と呼ばせてもらえないのがちょっと不満そうだが大人しく引き下がった。



もちろんそんな掛け合いを見ていたほかのメンバーが笑いをかみ殺していたのは言うまでもない(笑)




旅立ちは陛下以下王宮の人たち全員から万歳三唱で送り出される……なんてことはなくてひっそりと慎ましやかに行くことになった。


私としても目立ちたいわけじゃないので有難い限りなのだが、この国の命運(?)をかけての探索のはずなのにこんなに地味なのでよいだろうか??


そう疑問に思ったのは私だけではなかったようでヴァレリアさんが馬車の隣で馬を並べていたカーティスに声をかけていた。


「質問をしても良いだろうか?カーティス殿?」


「私にわかることであれば何なりと」


「出発を秘密裏に行うということは何か気にかかることがあるのではないか?」



そう、出発には2頭立ての馬車が2台と馬が3頭。旅の荷物を詰め込んでもたったこれだけというのはこう、なんというか、かなり質素だと思う。

言い換えればたったこれだけだからこそいざとなったら荷物を1台にまとめて移動できる機動性があるということか。


「流石は元親衛隊副隊長殿。やはり気づいておられましたか。……どこの国にも耳聡いものがいるようでサヤ様のご出発自体を妨害しようとするものがおりましてな。一応そちらは何とかいたしましたが念には念を入れてということです」


カーティスの言葉にヴァレリアの眉間に皺がよる。

美人は顰め面をしても迫力ある美人にしかならないんだなーとちょっと感心してしまった。そんな場合じゃないのにね。


「それならある程度までこのまま進んだらその後は馬車を1台に減らして、パーティーを二つに分けた方が更に欺きやすくなるんじゃないですか?」


ヴァレリアさんと一緒の馬車に乗っていた私が提案するとカーティスはもちろん馬車のたずなを握っていたバーニー神官長も驚いた顔をした。


「何故その案をご存知なのですか?」


振り返って驚いた声を上げたバーニー神官長だが、わき見運転は危険だから前を向いてください、前を!


車と違って馬は急ハンドルで曲がるわけじゃないからとりあえずまっすぐ歩いてくれてるけどここはまだ城下町を完全に抜けたわけじゃないからそれなりに人通りもある。

急に人が飛び出してきて撥ねたりしたら大変だからたずなを握ってる時はよそ見しないで欲しいです。


「別に案を知っていたわけじゃないですよ?ただ、そんな事情であればなるべく怪しまれない状態にしたほうがいいと思っただけです」


「さすがはサヤ様。ご慧眼感服いたしました」


馬上からもスマートな礼を取るカーティスだが、これってやっぱり問題だよねぇ…。

私の考えには気づかないカーティスたちに内心で唸る。


うん、今夜の宿に着いたら改めて全員集合させて一言いっておこう。







そして第一日目の宿泊。


場所は王都から東に5ファロン(1ファロン=約1Km)ほど離れた場所にあるあまり大きくない街だった。

その中でも割と上等な分類に入るであろう宿を今夜の宿と決めると魔術師組みは街にある神殿へ向かい「神」に対する新たな情報が入っていないか確認にいくことに。

騎士組みは宿の周囲の安全確認とこれからのたびに必要なものを追加で買いに行った。


残された私とメリッサさん、ヴァレリアさんは宿でお風呂を借りることにした。

(ちなみに王子は嬉々として騎士組みと一緒に買い物に出かけた)


「気持ちいいね~」


「本当ですわねぇ。乗っているだけとはいえ、やっぱり体が痛くなりますわ」


「同感。普段馬車なんて乗り付けないからやっぱり疲れるよ」


3人揃って宿のお風呂(なんと温泉だった!)に浸かってのんびりと体の凝りをほぐしていると脱衣所に人の気配がした。


この時間、浴場は私達が貸切にしてもらっているので他の人がはいってくることはないはずなのだ。

わずかな物音に真っ先に反応したのはやはりヴァレリアさん。

ざっと湯船から立ち上がるとタオルを体に巻きつけ油断なく身構える。

メリッサさんも私の前にすっと移動してきてさりげなくかばってくれる。


だが、飛び込んできたのはシーラさんだった。


「みんなずるいですー!わたしが出かけてる間にお風呂入るなんてー!わたしもいれてくださーい!」


ばーんと登場したその姿に先に入っていたメンバーが思いっきり脱力したのはいうまでもない。


まぁ、その後はシーラさんも含めて4人でキャッキャウフフとガールズトークを楽しむことが出来たので良いとしますか。



お風呂から出た後はお楽しみの夕食。

この宿はごたぶんに洩れず、1階が食堂、2階が宿という造りで、食堂に女性陣が移動したときには男性陣が先に席についていた。


「みんな遅いぞー。こっちは先にはじめてるからなー」


クレイグの声に見やれば確かに男性陣のテーブルには酒とつまみが並んでいる。

もう一杯やってるとは早いなぁ。


私たちも席に着くと今日のお薦めメニューと飲み物を頼む。


この世界では16歳から成人とみなされているし、アルコールに対して年齢規制はない。なので私が飲んでも文句は誰からも言われないが、それでも私はノンアルコールの飲み物を頼んだ。


「何だ、サヤ様は飲めないのかい?」


「あー、いえ、飲めないわけではないのですが、まぁ色々ありましてなるべく飲まないようにしているんです」


クレイグの絡みをさらりと流したが、お酒に関しては良い思い出が少ないので飲まないことにこしたことは無いでしょう。


長くなったので分割します。


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2012.6.25 誤字修正

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