表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

「伝説の人」の立ち位置

なんだか謀られたかのように「自称・神」とやらを探しに行くハメになってしまったけど、私のメインはあくまで省吾さん探し。


バーナビー神官長情報によればどうもその「神」が省吾さんっぽい気配がするんだよね。でもあの省吾さんが神様って似合わなすぎる。


だって省吾さんは長身で体格が良くて目つきの悪さを隠すためにいつもサングラスをかけている人だ。

その外見で何度やばそうな人に喧嘩を売られそうになったことか。


その実体は見た目に反してとても優しい人だ。

小動物が好きだったり、一度身内として認識した人にはとことん優しい。

だけど一度敵にまわすとあれほど怖い人も珍しいかもしれないと思う。


基本的に平和主義者だけど、その体はSPとしての実力をいつでも発揮できるように無駄なく鍛え上げられている。

大柄な体格に反してとても俊敏だし、冷静で状況判断を誤ることなんて私の知っている限りではなかった。


そしてなによりアメリカ留学時代にいろいろなところで鍛え上げられたらしくて銃火器の扱いやCQC(Close Quarters Combat 近接格闘)もマスターしているというとんでもない人なのだ。


そんな人だから突然知らない世界に放り出されたとしてもとりあえず無事でいると思うのよね。サバイバル経験もあるって言ってたし。


でも、やっぱり早く逢いたい。


私は幸か不幸かとりあえずの後ろ盾を持てたから急に困ることはない。

だけど省吾さんは困ってないだろうか?


そう思うといてもたってもいられず王宮を飛び出して探しに行きたくなってしまう。


だけどどういうわけかお付というかお目付け役がつくことになってしまって一人で勝手な行動を取ることができなくなってしまったのよねぇ…。










謁見の間を辞して自室に戻ると早速神官長が探索のための準備について話してくれるらしい。

(ちなみにアレックス王子はやることがあるとのことで謁見の間を出て直ぐに別れた)


「では勇者サヤ殿。「神」探索のための出立は一月後なります」


「何故一ヶ月もかかるのですか?それと勇者と呼ぶのはやめていただけませんか、バーナビー神官長」


「「神」の探索を請け負ったということは勇者になると決めていただけたと思っていたのですが?まぁ、そう呼ばれるのがお嫌ということであれば善処いたしましょう」


うわ、なんでこんな上から目線なんだろう。こういう態度は良くないと思うのよね。

神官長の言動にちょっとカチンときたのでいつかぎゃふんと言わせてやろうと心に誓う。


「さて、一ヶ月という時間は探索に同行する者たちの調整及びサヤ殿への教育期間となります。まさかこの世界のことを全く知らないまま探索ができるとは思われませんよね?」


バーナビー神官長のことばに思わずうっと言葉に詰まる。

確かに世界情勢含むある程度の基礎知識を得てからではないと別の厄介事に巻き込まれたりした時に立ち往生する可能性が高い。


だから基礎知識を学ぶというのであれば本来は一月という期間でも足りないだろう。

まぁ、この神官長のことだから一月というのであればその間にスパルタでも詰め込んできそうな気はするけどね…。

でも、探索に同行する人たちとは?


「今回の探索はきわめて重要、かつ極秘のものとなります。それはサヤ殿の身柄も含みます」


うん?私の身柄?それは「伝説の人」(レジェンド)とかいう身分のことなのだろうか?

そういえば「伝説の人」(レジェンド)が国を救うとか守るとかというのは聞いたけど、それはこのエフェノリアから見た立場。

この立場って他国から見るとどうなるんだろう?


ちょっと嫌な予感がしつつも重要なことなのでバーナビー神官長に尋ねる。


「一つお伺いしますが、「伝説の人」(レジェンド)という立場は他国から見るとどのような立ち位置にいるのでしょうか?」


私の問いに神官長は良く気づいたというように感心した表情になる。

うわー、更に嫌な予感が倍増したぞ?


「エフェノリアにおいて「伝説の人」(レジェンド)はこの国を栄えさせてくれる偉人に当たります。ですが他国から見れば自国以外が繁栄しすぎるのはあまり好ましくないでしょうね」


「つまり…」


「他国から見れば「疫病神」と等しいでしょうね。はっきり言えば存在されると困る、いなくなって欲しい存在でしょう」



あああ、やっぱりそう来たかー!


つまり私はエフェノリア国内にいる限りはちやほやされるけど、一歩国境を出たら命を狙われるってことですね。


そういうことを最初に伝えないあたりやっぱりこの神官長はいい性格してると思う。



「まぁ、そういうことですから探索の旅には優秀な護衛を同行させていただきます。とりあえず武官を3名。魔術師を3名、それにサヤ殿の身の回りの世話をする侍女を2人」


「私を含めて全部で9名ですか。この人数を多いと評価すべきなのでしょうか?それとも少ないと思うべきなのでしょうか?」


「サヤ殿の身を安全を確保するという点であれば少ないかもしれません。ですがあまり大人数で移動すれば他国に探索範囲を広げたときに不審に思われてしまいますのでこの人数が限界かと」


それにもしかしたら…と神官長が何か言いかけたが確定事項ではないらしくその先は教えてくれなかった。


「侍女についてはエレーナ殿に一任してあります。詳しくは彼女に聞いてください。その他の護衛につきましては一週間以内に選抜してご連絡いたします。それまでは女官長の指示に従ってこの世界のことを少しでも学んでおいてください」


バーナビー神官長はそう言うと忙しそうに部屋を出て行った。



はぁ、なんだか省吾さん探しの旅はスタート地点にすら立ってないような気がしてきたぞ。

そんな私の大きなため息が広い部屋に響き渡ったのをとがめる人はとりあえず誰もいなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ