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自己紹介

というわけで、第四話です。今回は少し短め。


というか、他の方々の作品を読んでいると、もう少し文章ボリューム挙げたほうがいいんでしょうか……。短く感じる今日この頃。


あるいは、行間をもっと空けるべきなんでしょうかね? 読みにくかったりするのでしょうか。


まぁ、それはさておいて、第四話、お楽しみくださいませ

「それでは、ごゆるりとご歓談くださいませ」

「ああ、下がれ」


 ふかぶかとお辞儀して去って行ったのは、後宮の侍女を統括する女官長だ。

 このお茶会のセッティングなどを任されているらしく、今日も事前に注意事項などをイーリス達に説明してくれた。

 お茶会は、王城の中庭で行われる事になった。

 丸いテーブルに、レンフィールド、ファミルス、イーリスがそれぞれ三角形を描くような形で座っている。

 ファミルスは健康的な美人であり、すらりと背が高い。プロポーションも豊満とは言えないが、スレンダーで整っている。

 銀色の髪を項のあたりで縛り、纏めて背中に垂らしている。顔立ちもキリリとしており、鋭い中に女らしい優しさと愛らしさを同居させていた。

 運動能力の高さは、この席に現れてから座るまでの所作で十分に確認できた。

 着ている翡翠色のドレスも装飾が少なく、動きやすさを重視しているのが見てとれる。自分が今着ているごてごてとした動きにくい見た目だけの服とは対照的だ。

 化粧も薄く、最低限。これも、今は派手に目立つ化粧をしている自分とは対照的。

 もっともイーリスにしたって、こうして目立つ格好をしているのにはいくつかの理由があるが、それは今この場には関係が無いので割愛する。

 侍女が用意した紅茶の匂いに目を細めながら、イーリスは同席している二人の様子を観察する。

 レンフィールド王子は、正直かなりイライラとしているようだった。

 朝から休憩の合間を縫うようにして既に三回もお茶会を行っており、調べた最新の情報だと、どのお茶会でも当て馬の令嬢が派手に自分をアピールし、本命の令嬢たちはそれを冷めた目で見たり、うろたえたりしていたらしい。

 王子からすれば、もううんざりという感じなのだろう。

 ファミルスと言えば、此方もむすっとした仏頂面だ。よほど、このお茶会が気にいらないらしい。

 王子の後ろに控え、心配そうに見ているのがファミルスの兄、カイル・シレットだ。王子を護る近衛騎士の一人であり、階級は小隊長。エリートだ。

 妹の態度が無礼にあたると、相当心配しているらしい。顔色が悪い。

 どちらも、自分以外を無視して紅茶に口を付けている。

 そのくせ、お前から先にしゃべれとでも言うようにを牽制するものだから、正直言って空気が悪い。

 ちなみに、牽制相手にイーリスは含まれていない。

 眼中にないのだ、イーリスの事など。

 そしてこんな場合でも空気を読むのが、イーリスだ。

 空気を呼んで、空気が読めてない行動をする。


「……お静かですわね、お二人とも。とりあえず、今一度自己紹介を。殿下には昨日名乗りましたが、ファミルス様とは昨日のパーティーでお顔を拝見させて頂いていましたが、ほぼ初対面のようなものですし」


 苛立ちを含んだ二対の視線がイーリスに向けられる。

 うざったい、と明確にその視線が主張していた。

 だがそんなものでひるむイーリスではない。


「私は、イーリス・ミル・カミジールと申します。カミジール男爵家の三女ですわ。趣味は楽と、最近になって戦略遊戯というもに傾倒してしまいまして。家では、私に勝てる相手がいない程になっていますわ」


 イーリスの言葉に王子は蔑むような視線を送り、ファミルスは冷笑を浮かべる。

 空気を読まず発言したイーリスを馬鹿にした視線だ。

 同時に、女だてらに戦略遊戯をする事に対して、そして井の中の蛙である事に対して嗤っているのだろう。

 そして二人とも沈黙。

 再び、どちらが先に発言するかで牽制を始めたのだ。

 それを見て、イーリスはファミルスの評価を下げる。

 阿呆だ。

 こう言う場とはいえ、ファミルスは臣下なのだ。

 如何なる理由や事情があろうと、名乗りをする順番を巡って王子と牽制し合うなど、不敬にも程がある。

 それを理解しているのか周りではファミルスに対して非難するような視線が浮かび、カイル等は顔面蒼白でファミルスの背中を睨んでいる。

 いい加減にしろと、王子さえいなければ怒鳴りつけていそうだ。

 仕方がない。

 助け船を出すとしよう。


「あら、ファミルス様は自己紹介も出来ないのでしょうか? まったく、これだから剣を振るしか脳の無い野蛮な方は困ったものですね。教養というモノをお持ちではないのですか?」

「な――っ!」


 イーリスの挑発に瞬時に激高する。

 顔を赤くし立ち上がり、音がするぐらいに歯を食いしばった。


「私が自己紹介をしたと言うのに、だんまりとは失礼ですわよ? 殿下も貴女が発言するのをお待ちだったと言うのに。これで万が一殿下に先にお名乗り頂いたとしたら、貴女は礼儀も知らない田舎者という事になるでしょうに。それくら、お分かりにならないのですか?」

「っ、っ……! ファミルス・シク・シレットだ――です。シレット子爵家の長女で、殿下の後ろに控えているカイル・シレットとは双子の兄妹になります。趣味は遠乗りや狩り、剣技を鍛える事。戦略遊戯も父の影響で嗜みますが……それは別に大したことではありませんね」


 怒り心頭という顔でイーリスを睨んだ後、その怒りを噛み殺して自己紹介を始める。

 感情のコントロールが早く、一度場を認識すればそれを意識した行動が出来る。

 自分の感情に正直すぎる点が欠点であり美点とでも言うべきか。

 口調を丁寧に直したのも好感が持てる。

 此方が戦略遊戯の事を口に出したから自分も対抗するように話題に出すなど、可愛い所もあると思う。

 素直でいい子だ。

 言うべき事を言い終わると、イーリスを睨んだまま椅子に座り直す。

 横目でちらりとカイルを観察すると、安堵の表情を浮かべていた。

 それでも、顔が蒼い事には変わりがないのだが。


「……知っているとは思うが、第一王子のレンフィールド・メイス・アークジュエルだ。趣味は……なんだろうな。武術の鍛錬は好むが、最近はあまりしていない。時間が取れずにな。ああ、知りたいだろうから教えておくが、俺は今回の一件、乗り気ではない。最終的に誰も選ばない、という選択肢があるかもしれない事をよく覚えておけ」


 次いで発言したのは王子だ。

 気だるそうな表情で淡々と自己紹介を行い、二人の正妃候補をどうでもよ良いというような視線で見る。

 その仕草に、イーリスは内心でマイナス点を付ける。

 正直なのは美徳なのかもしれないが、この場だけで言うならば欠点だ。

 阿呆と言ってもいい。

 王子が乗り気でないのなど、昨日のパーティーで候補者全員が悟っている事だろう。

 何せ、令嬢たちを見る視線には嫌悪と蔑みの色しかない。

 腹芸をこなしていかねばならない王太子の身分で、いくら相手が女性ばかりとはいえそんなあからさまな態度でどうしようと言うのか。

 集まった中に、イーリスのようにいずれ使えるべき主の品定めに来ている人間がいるとは考えないのだろうか。

 王たるもの、そう簡単に自分の内心を気づかせてはならない。

 分かり易ければ分かりやすい程、周りから利用もされやすいのだから。

 無論、かといって閉ざしすぎれば今度は理解が得られない。

 理解が得られなければ周りから疎まれ、排斥される恐れもある。

 何事も適度に。

 時々感情を見せ、普段はうちに仕舞う。普段と感情をあらわにした時のギャップが大きければ大きいほど、臣下は王を畏れるものなのだから。

 今回、そして昨日の態度も、あえてそうして見せているのであれば文句は無かった。

 自分の態度が周りに与える影響というモノをよく理解し、その態度を見せる事で何らかの成果を得られるのであれば重畳。

 以前も言った通り、イーリスの言動や服装などにも意味がある。

 わざと衣装や化粧、言動を派手にすることで、普段の自分に戻った時に気づかれにくくする意図があるのだ。

 無論、王子に嫌われると言う意図も大きいが。

 まぁ、まだ若いのだから腹芸は苦手なのかもしれない。

 そんな事をつらつらと考えながら、イーリスは同席する二人に視線を走らせる。

 王子はつまらなそうな顔をしており、逆にファミルスは苛立った顔をしている。

 それはそうだろう。自分だって望んできているわけではないのに、相手側から「お前なんかいらない」と言われたに等しいのだ。

 武人気質なファミルスが怒るのも当然である。

 もっとも、イーリスはその感情すらも利用するが。


「……そうですか。ならば殿下、私も言わせて頂きますが、私は殿下の正妃等というモノに興味はありません。二か月先とは言わず、明日にでも――」

「あら、ファミルス様は敵前逃亡をなさるつもりなんですの?」

「――なんだって!? も、もう一度言ってみろ!」


 ファミルスの言葉に割って入る。

 せっかく直していた丁寧語をかなぐり捨てて眦上げて怒鳴る様子に、上手くいったと内心でため息。

 何故割って入ったか。

 あのまま話が進むと、明らかに不味い展開に入るのが目に見えているからだ。

 ここでファミルスを返すと言う展開になってしまえば、例外が認められてしまった事になる。

 つまり王子が候補者全員を追い返す口実になる可能性が出てくるのだ。

 イーリスとしては構わない。

 そもそも早く実家に帰りたいと言うのが本音だ。

 だが。

 今回王子の正妃が決まらなければ、また同じような事が起こる可能性がある。

 そしてその時、今回王子に選ばれなかった事を恨んで他国の資格になる令嬢が出てこないと、どうして言えようか。

 今回は集められたのも急であったし、他国へ伝える余裕もなかっただろう。

 だが人の口に戸が立てられないとも言うし、確実に王子が正妃候補として集められた令嬢たちを冷酷にも相手にせず追い返したという話は他国に伝わるだろう。

 それを好機と思う国も出てくるかもしれない。

 酷い対応をされた令嬢を操り、王子を無きものにしようとするかもしれない。

 そう言った事態が起きた時、対処に当たるのは十中八九イーリス達カミジール家だ。

 正直、面倒くさい。

 今のイーリスからすれば、この王子に対してそこまでする義理を感じられない。

 そんな魅力がある人物には見えないし、あくまで今後に期待、というレベルなのである。

 だから、是非とも今回の正妃選び伴侶を決めてもらいたいのだ。

 そうすれば、再び不特定なうら若い令嬢たちを集めたりする必要が無くなるのだから。

 瞬時のそんな思考を廻しながら、別の場所でこの後どういう風に会話を持っていくかを考える。

 此方を睨みつけるファミルスと、そんなファミルスを少しだけ興味深そうに見る王子。

 それを確認すると、一拍置いてイーリスはしゃべりだす。

 もちろん、嫌みで高圧的な女を演じながら、だ。



というわけで、ライベル令嬢の一人が初登場。ボーイッシュな騎士っ娘ちゃんですね。

イーリスはいい感じで悪女をやってます。まぁ、色々突っ込みどころはあると思いますが、どうぞ温かい目で見つつ、容赦なく詰ってください。喜びます(マゾか


ちなみに三話で語っていた間諜についてですが、ほとんど創作です。ただ使っていた術に関して言えば、本当に過去の忍者が使っていたものだったりします。

資料では、ですけれども。


詳しくは、落第忍者乱太郎とかを読んでみればいいかと! 私、あれの大ファンです。


きり丸×トモミちゃんは正義ですよね……?

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